事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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全文-35 (2013/02/27(水) 20:20:16)
2012.04.23

 全文-35
 
第一節 アリバイを完璧に証明する 「第一の事項」
 
 〔二つの時間〕 と 〔五つの条件〕
 
 「第一の事項」 の論題を示します。
「利佐子の最初の自覚症状の訴えから、心肺停止までの経過時間などの諸条
件を考察すると、仮に、トリカブト毒とフグ毒を服用したとしても、その経過時間帯
が特定され、その時間帯は、証拠上、利佐子がカプセルを服用した事実はないと
認定されている時間帯であること」論題にある「最初の自覚症状の訴え」 とは、
第四章の三「作為を持って排除し
ている」 で説明したように、「発症」 なのです。
よって、「発症」 とは、「最初に 
自覚症状を訴えたとき」 と、厳密に規定して以降
は使用します。また、利佐子は
トリカブト中毒で死亡したと仮定して話は進めます。
 
 「第一の事項」 の論題の趣旨を説明します。
トリカブト中毒における発症時の血中濃度は、五つの症例の一四名中一一名
について血中濃度が測定されていることから、個人差を考慮してもある範囲内に
確定することができます。その範囲の上限は、10mg/mlとなります。利佐子の発
症時の血中濃度を考える場合、両毒の拮抗作用を加味しなければなりません。
両毒の拮抗作用が最大にあったと仮定すると発症時間が約二倍に延長し、それ
の伴う血中濃度の上昇も約二倍となります。そこで、一〇mg/mlの二倍の血中
濃度は二〇mg/mlとなり、利佐子は血中濃度が二〇mg/mlに上昇するまでには
発症することになります。

 利佐子は午後二時一〇分に心肺停止となり、その時までに血中濃度は一二
五,七mg/mlに上昇していると測定されています。利佐子が発症した時刻は午後
一時二七分と確定していますが、この時の血中濃度がいま指摘したように、二〇
mg/mlとすると、利佐子の血中濃度時間曲線(グラフにおける血中濃度の上昇の
あり方) の午後一時二七分と午後二時一〇分の二点の血中濃度が確定してい
ることになり、この二点の血中濃度とその間の経過時間(この場合は四三分間) 
を基にした計算により、トリカブト毒が小腸から吸収を開始する時刻が、発症から
約八分前と確定します。ただし、利佐子の場合、吸収してから薬理作用を及ぼす
までの経過時間の最長時間が一〇分間で、その時間が八分間
を超えていますので、
一〇分間を採用し、小腸から吸収を開始する時刻が午後
一時一七分となります。
この時刻にカプセルの熔解時間(三重にした場合の最長
時間で一二分一五秒) 
と、胃内容排出時間(胃の内容物が小腸に移行する時
間、空腹時の抽出エキス
では約五分) を加味しますが、確実性を考慮して合わ
せて二〇分間とします。
ですから、カプセルを服用した時刻は午後〇時五七分と
なります。
利佐子は、午後〇時五三分以降、カプセルを服用した可能性はまったくないと
認定されています。よって、以上の結果から、利佐子は両毒入りのカプセルは服
用しておらず、事実は、トリカブト中毒で死亡したのではなく、病死であることが定
まり、私のアリバイは成立することになります。
「第一の事項」 の主旨はこのようなことですが、アリバイの成立を完璧に証明
するために、考えうるさまざまな様態を取り上げて検討し説明いたします。
 
 「第一の事項」 を組み立てている条件として、〔二つの時間〕 と〔五つの条件〕 
があります。
 これらをグラフで示したのが、「図1 午後〇時四三分に服用した場合の血中濃
度の上昇のあり方」 です。服用時刻をなぜ午後〇時四三分に設定したかは、こ
のあとで説明します。この図1を中心として説明していきます。
 
 この〔二つの時間〕 と〔五つの条件〕 が、利佐子がカプセルを服用してから心
肺停止に至るまでの動態にどのように当てはまるかは順次説明していきますが、
まず大筋を説明しますと、カプセルを服用してから、〔二つの時間〕 (カプセルの
熔解時間と胃内容排出時間) が経過して、小腸から吸収が開始され、〔第一の
条件〕〔第二の条件〕 (血中濃度時間曲線のあり方) のような曲線を描いて血
中濃度は上昇していき、〔第三の条件〕 (発症から心肺停止時の血中濃度) を
過ぎて、〔第四の条件〕 (心肺停止時の血中濃度) に達します。この四つの条
件から利佐子の発症時の血中濃度が確定し、これらの結果から〔第五の条件〕 
〔五つの症例から導き出された発症時の血中濃度〕 と比較して、利佐子がトリカ
ブト中毒で死亡したか否かを判断します。
 ここまでの説明で問題となるのは、先ほどの趣旨の説明で、トリカブト中毒の発
症時の血中濃度の上限を、一〇mg/mlと確定したことです。「第一の事項」 で
は、この問題がもっとも重要な問題となります。トリカブト中毒では、実際には、ど
の程度の血中濃度に上昇すると発症するか? という問題の答えは、五つの症
例で明らかにできますが、それは次の標題「血中濃度が事実を語る」 で説明す
ることにしています。ここの標題では、次の標題で検討する、トリカブト中毒の発症
時の血中濃度と比較する準備として、利佐子の行動で、Vホテルに到着したこ
ろ、チェックインを終了したころ、発症した時、の三つの時点の血中濃度を算定し
ます。図1で示している〔第五の条件〕 がそれに当たります。

図-1
グラフ-1   
 画像をクリックで拡大します。

図-2~5
グラフ-2 

画像をクリックで拡大します。

 午後〇時四三分以降にカプセルを服用していないことの根拠を説明します。
利佐子が搭乗した南西航空機が石垣空港に到着したのは、南西航空株式会
社からの回答書によると午後〇時五三分であり、判決もこの時刻の到着と、この
時刻以降のカプセルの服用はないと認定しています。また判決文は、「利佐子
は、同空港到着後、手荷物の受け取りをAとCに頼んでターンテーブル近くのベ
ンチに腰掛けてBと一緒に喫煙し、午後一時ころ、同空港前からAらとタクシーに
乗車して宿泊予定のVホテルに向かった」 と記述しています。
 空港に到着してから、タクシーで出発するまで、この間七分ほど経過しますが、
このことは、午後〇時五三分の到着時刻とは、乗客が搭乗口から降りはじめた時
刻と解釈できます。
航空機が着陸態勢に入ると飲み物のサービスはできなくなり、乗客は座席の
背もたれを元に戻しシートベルトを締めます。航空機が石垣空港に到着すれば水
を求めていつでもカプセルを服用できるのですから、着陸態勢にあるそのような
状態で水なしでカプセルを服用するなどということは絶対にありえません。航空機
は着陸態勢に入ると、高度を下げ、滑走路に着陸し、誘導路を移動して乗客を降
ろす場所に着き、タラップを準備し、その後、搭乗口を開けて乗客を降ろしはじめ
ます。着陸態勢に入ってから乗客を降ろすまで、少なくとも一〇分は経過します。
以上の状況から、航空機が石垣空港に到着した午後〇時五三分の一〇分前
、午後〇時四三分を利佐子がカプセルを服用した可能性がある最終時刻と設定
し、この時刻に利佐子はカプセルを服用したと仮定してその後の血中濃度の上昇
のあり方を検討していきます。
ただし、第四章五、「服用したとすると二時間以上前」 で説明したように利佐
子の具体的条件と様態とを検討すれば午前一一時二〇分以降のカプセルの服
用はありえないのですが、具体的条件と様態を無視して機械的に考えれば、この
時刻以降はカプセルの服用は絶対にありえないという時刻として午後〇時四三
分を設定しています。 
 
 それでは、午後〇時四三分に利佐子が両毒入りのカプセルを服用したと設定して、
その後の血中濃度の動態にかかわる、図1に示した〔二つの時間〕 および
〔 第一の条件〕 から〔第四の条件〕 までの四つの条件について説明します。
〔第一の事項〕 については、図1がすべての説明の基本となっています。
 
 「カプセルの熔解時間と胃内容排出時間を加えたものが、利佐子がカプセルを
服用してから吸収開始までの経過時間を確定する。」
午後〇時四三分に服用したカプセルは、溶解しながら胃から小腸に移行します
。トリカブト毒は胃からはほとんど吸収されず小腸から吸収されるため、吸収が開
始されトリカブト毒の血中濃度の上昇がはじまるのは、カプセルが溶解しきれずに
小腸に移行し小腸で熔解して内容物が露出して吸収がはじまるか、カプセルが胃
または移行中に溶解して露出した内容物が小腸に移行して吸収がはじまるかの
どちらかです。
 
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