事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
201705 << 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >> 201707
スポンサーサイト (--/--/--(--) --:--:--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
全文-22 (2013/02/10(日) 11:57:05)
2012.02.13

 全文-22
 
 ここまで主要な状況証拠について、検察官の主張と私の反論とを記述してきま
した。利佐子の血液の保存が杜撰であった事実については、残念ながら、検察官
は論を加えず沈黙します。
 ここからは、残された重要な問題を、鑑定書や鑑定人等の証言を囲み記載しな
がら簡潔に説明します。
 
 利佐子の死亡当日の動態について、検察官の主張は大変曖昧です。
利佐子の最初の自覚症状はどのようなもので、時刻は何時か、といいことが検察
官の主張からは正確に捉えられません。利佐子が宿泊予定のホテルのチェックイ
ンの時刻は午後一時十五分頃ですが、
 

  友人Bの尋問調書、およびホテルの従業員からチェックインのときの状況を聞
 いた利佐子の兄の尋問調書によると、チェックインの手続きは四人を代表して
 利佐子が一人で行い、記入した書類にも筆跡の乱れはなく、てきぱきと手続き
 をしている。どのような自覚症状も一切訴えていない。

 
 ということですので、この時点では自覚症状はありません。
 

  利佐子を解剖した琉球大学医学部O助教授の尋問調書によると、利佐子が
 死亡した翌日、八重山警察署から、何時何分にどういう症状というメモをもらい、
 午後一時二十七分、嘔吐がはじまったということで、その時間をいちおう発症と
 考えたと、証言している。

 
 これが最初の自覚症状です。検察官は、午後一時十五分以前のタクシー内で
の発汗を発症と指摘しますが、事実誤認の曖昧な認定です。最初の自覚症状
が嘔吐ということが問題です。
 

  東北大学O教授他二名作成の鑑定書(一九九四年一月一八日付け) による
 と、トリカブト毒のヒトの中毒症状としては、初期に酩酊状態、のぼせ、顔面紅潮
 眩暈、舌や口のまわりから順次頂部、上肢部、腹部へと下行するシビレ感、蟻
 走感、心悸亢進、さらに進むと流涎、舌の硬直、言語不明瞭、悪寒、冷汗、悪心
 嘔吐、口渇、腹痛、下痢などからチアノーゼ、瞳孔散大、体温低下、血圧低下

 喘鳴、視力障害、意識混濁、脈拍細小・不整・微弱・緩徐、呼吸緩慢、痲痺な
 どを起こして死に至るとされる。

 
 この症状の進み方からすると、嘔吐は中期の症状です。利佐子はトリカブト中
毒ではないので、発症が嘔吐でも不思議ではありません。O教授はトリカブト中毒
の初期症状のシビレ感について、
 

  この口ないし手足や体幹のしびれ感について、共同鑑定書の鑑定人の一人、
 O教授は次のような主旨の証言をしている。
 
  人間の場合には手足、口の痺れを訴えることから症状が起こり、初期の口の
 中のしびれは直接的な口の中での作用で、手足のしびれは吸収後の体の中で
 の作用である。

 
 と証言し、両毒の拮抗作用があっても、
 

  両毒をヒトに同時に投与したときの症状の現れ方について、O教授は次のよう
 な主旨の証言をする。
 
  両毒の拮抗作用により、投与から発症、発症から致死まで、経過時間がそれ
 ぞれ平均的に約二倍に延長する。
 両毒の拮抗作用があっても、症状は、初期、中期、末期と、順次出現する。
 
  両毒の拮抗作用があっても、しびれ感などの初期症状が出現しないわけでは
 なく、遅れるだけである。

 
 と証言します。さらに、末期の症状は、先ほどの囲み記載の鑑定書に寄れば、
意識混濁が現れるのですが、利佐子は意識は清明です。
 

  救急隊員の尋問調書によると、心肺停止の直前まで、問い掛けにはっきりとし
 た口調で答えており、意識の混濁はない。心肺停止のとき、目をむくような状況
 は認めていないと証言している。

 
 検察官はトリカブト中毒死を主張しながら、この初期症状のしびれ感がないこと
と、末期に意識混濁が現れないことに沈黙します。
 
 状況証拠ではありませんが、アリバイに匹敵する証拠であると私が主張する
「三つの事項」 について検察官がいかに論じているか、簡潔に説明いたします。
私が繰り返し提起している、利佐子の死亡当日のトリカブト毒の血中濃度の動態に
ついてですが、午後〇時五十三分以降のカプセルの服用はないと検察官自
ら認定
しながら、その後の血中濃度の動態についての私の提起には耳を傾けず
一切無視して、服用から発症まで約二時間に拘泥します。検察官は共同鑑定
書の記載を取り入れ、
 
 
   共同鑑定書
 Ⅳ 鑑定
 一の1 被害者神谷利佐子と同等の体格の者に対して、アコニチン系アルカロイ
 ドを投与する場合、アコニチン系アルカロイドの致死量は、
  (1)     水飴状のとき二二五mg程度
  (2)     粉末状のとき四五〇mg程度(抽出物と小麦粉の重量比を一対一として
 計算) と推定される。
 一の2 右記致死量を被害者神谷利佐子と同等の体格の者に投与した場合の発
  症時間は、
口唇や舌のしびれ感は摂取直後から二〇~三〇分以内に出現し、不整
脈は悪心、発汗、嘔吐等と前後して三〇分から一時間前後に出現する
と、推定される。
 二   フグ毒とトリカブト毒を同時に生体に投与した場合の生体における発症
時間は,
経口投与では、アコニチン単独投与の場合と差が生じる。すなわち、投
与量や投与形態にもよるが同時投与の場合が単独投与の場合よりも二
倍程度遅くなると推定される。
 三   メサコニチン、ヒバコニチン、アコニチン、ジェサコニチンのそれぞれの体
内吸収速度及び比率を比較することは、
ジェサコニチンを除いて可能である。すなわち、これらアルカロイドの体内
吸収速度は、ヒバコニチン>アコニチン≧サコニチンの順序である。ま
たその比率は別紙6から、およそ三・二対一対一と推定される。なおジェ
サコニチンについての服用液及び血中濃度に関するデータはなく、実際
の中毒時の吸収の程度を推定するのは困難である。
 
 
「一の2」 の投与から嘔吐まで一時間前後と、「二」 の同時投与の発症時間
が二時間程度遅くなる、を乗じて約二時間を捻出したのです。
 

  O教授は、両毒の投与比率を変えた場合の生存時間の延長について、次の
 ような主旨の証言をしている。
 
  アコニチンを致死量の約五倍投与するのに対して、同時投与するテトロトドキシ
 ンの投与量を、致死量の一倍、二倍、三倍、四倍と変えて実験してみると、生存
 時間の延長倍率は一・二倍とか一・五倍とか二倍に変わってくる。致死量の約六
 倍の投与量は、比較的顕著に延長する投与量を選んでいる。

 
 しかし、この証言から、「二」 を利佐子の場合に適用することは不可能ですし、
「一の2」は、根拠が明らかでなく失当です。
 五つの症例を再度記載して検討しますが、一の2では「致死量を投与した場合」
と指定していますから、症例5は排除します。すると、摂取から一時間後に発汗や
嘔吐が出現した例はありません。
 

  トリカブト中毒の五つの症例
 
[症例1]
 平成元年四月、男性医師(五二歳) が採取した山菜(トリカブトをニリン草と誤
認) をおひたしにして医師は小皿に一皿、その長男は二つまみほど食した(同午
後六時五分) 、医師は食直後から舌のしびれを感じていたが、同六時四十分か
ら外出し同七時五分帰宅直後長男が口、手、足の痺れを訴えたのでトリカブト中
毒と直感し、強制嘔吐、医薬品の投与、人工透析等の処置を行った。医師は同
午後九時から不整脈が現れ、同午後十時には血圧が七十mmHgまで低下、冷
汗、皮膚温低下、悪心、嘔吐が続いた。同午後十時から十一時頃が最も症状が
強かった。また、痺れは翌朝四時前まで続いた。一方、長男は同午後七時過ぎに
は不整脈が出現したが同午後十一時頃には回復した。痺れ感も翌朝二時には消
失した。記録された心電図によると長男は医師よりも危険な不整脈を持ってい
た。医師は摂取量が多く症状は末期に近かったにも拘わらず、心電図所見が軽
症であったのは、医師が高血圧のために服用している持続型の抗カルシウム剤
アダラートL(一日二十mgを二回服用) のためではないかと推察している。
 
  [症例2]
平成元年八月、男性(四十四歳)は郵送されてきたクズモチを十切れ、その娘
(四歳)は一切れ半食した。男性は五分後に口及び体のしびれを感じ、摂取二十
分後に来院した。来院時不穏状態で発汗、嘔吐があり、足の麻痺があった。鎮静
目的で医薬品を投与したところ、呼吸抑制がみられたため人工呼吸を開始した。
この前後より大腿動脈の拍動触知不能となり、致死的不整脈を発症していたの
で、心肺蘇生術及び各種の医薬品による治療を行ったが、心停止となり、来院後
四時間で死亡した。
 
 その娘は、摂取五分後に口、手足のしびれを訴え、やがて歩行困難となり摂取
二十分後に来院した。受診時不整脈は認められなかったが、その五分後に悪心
嘔吐及び不整脈が出現した。直ちに胃洗浄や医薬品の投与等の処置を行った。
その後、医薬品の投与等の処置を行い、来院後九時間で不整脈は回復し、全身
状態も安定した。、
 
  [症例3]
 平成四年四月、午前七時、男性(四十五歳) がトリカブトの根と茎を細切りにし
浸しておいた水溶液を自殺目的で服用し、同午前七時三十分に来院した。来院
時の主訴は口唇周囲のしびれ感であった。同午前七時四十五分に胃洗浄や下
剤投与等の処置を行ったが、同午前八時二十分には不整脈が現れ、呼吸停止
に至った。人工呼吸及び医薬品投与等の処置を行った結果、自発呼吸が戻り同
午前八時四十七分には不整脈は消失した。同午前九時から同日夕刻までわず
かに心室性期外収縮を認めるのみであった。
 
  [症例4]
 平成四年二月、昼、女性(六十一歳) が自殺目的でトリカブトの根を食し、
同十二時三十五分救急外来を受診した。受診時、譫妄状態で血圧低下
(七十mmHg)
、瞳孔散大、流涎、下痢、嘔吐が認められ、同十二時五十五分、
突然、致死的不
整脈を発症した。直ちに、心肺蘇生術及び各種の不整脈剤による
治療を行った
が、不整脈、心停止を頻回繰り返した。そこで心肺蘇生術施行下に
血液吸着療
法を行ったかっか、開始後約二十分頃より不整脈や心停止の頻度が
減少し、硫
酸マグネシュームによる不整脈のコントロールが可能となった。翌朝には
致死的
不整脈は消失したが、心室性期外収縮は翌朝以降も持続した。
 
  [症例5]
 平成五年四月、四家族八名が付近の山より採取した山菜(トリカブトをモミジガ
サと誤認) をおひたしにして食した。摂取約二〇分後全員に舌先先端部にしび
れを感じ、その後しびれ感は体幹及び上肢に広がった。八名中二名は摂取三十
分ないし二時間後に前胸部不快感、嘔吐及び呼吸困難を訴え病院で受診した。
受診時は不整脈はなかったが、その後不整脈が現れた。胃洗浄などの処置により、摂取五時間後不整脈は回復し自覚症状も軽快した。
 
 
 共同鑑定書は五つの症例を参考にして鑑定しているはずですから、鑑定書に
記載していない症例を参考にしたという言い訳は通用しません。なぜ、「五つの症
例」 に適応しない内容を、三教授は鑑定書に記載したのか、検察側の強い要請
によるものと考えられます。
 利佐子が両毒を服用したと仮定して、拮抗作用を検討します。
 

  東北大学M教授による鑑定書の利佐子の血液のトリカブト毒の鑑定結果は次
 のとおりである。
 
 アコニチン   二九・一ng/ml
 メサコニチン  五一・〇ng/ml
  ヒバコニチン 四五・六ng/ml
  合計     一二五・七ng/ml

   東北大学N講師による鑑定書の利佐子の血液のフグ毒の鑑定書は次のとおり
  である。
 
  テトロトドキシン等  二六・四ng/ml

   なおこの測定値には、テトロトドキシン以外にその変換物質である4-エビテトロ
  ドトキシン、テトロドン酸を含み、その比率は、三対四対一二六であり、ほとんどが
 テトロドン酸に変換している。

 
 鑑定結果は、トリカブト毒一二五・七mg/ml、フグ毒二六,四mg/mlです。
体重五〇kgのヒトの致死量は、両毒とも約二mgで同じですから、致死量を基準
にした投与比率は、フグ毒一に対して、トリカブト毒の投与量が約五倍ということ
は、先ほどの囲みきさいのO教授の証言から、生存時間の延長倍率は一・二倍と
解釈できます。
 共同鑑定書の「一の2」 は失当であり、「二」 は利佐子の場合には適用できな
いことから、検察官の服用から発症まで約二時間の主張は、まったく根拠のない
作文です。

 カプセルに詰められる量については、先ほどの共同鑑定書の「一の1」 トリカブ
ト毒の致死量は水飴状のとき二二五mg程度、を適用すると、〇号カプセル(容量
〇・六七mlにフグ毒を詰める余地はありません。その根拠は、血中濃度に体重を
乗じて目安として体内総毒量を換算する方法を、M教授もN講師も認めており、
判決もその方法を認定していますので、利佐子の体重四七kgで換算してトリカブ
ト毒は五.九mg、致死量のおよそ三倍になります。水飴状物質の比重は約一で
すから、二二五mgの三倍は〇,六七五mlとなり、〇号カプセルに一杯になります。
 
 検察官は、この事実を避けて、警視庁捜査一課のY警部補が抽出・濃縮し二号
カプセル(容量〇,三七mg) に詰めてM教授に鑑定を依頼し、致死量の約二七
倍の鑑定結果が出たY鑑定書を採用して、カプセル一個に約五,九mgのトリカ
ブト毒を含む水飴状物質は十分に詰められると主張します。しかし、フグ毒につい
ては、一切見解を明らかにしていません。
 密閉ガラス瓶と利佐子の保存血液の、アコニチンとメサコニチンの構成比率が
大幅に相違することについては、私が、抽出・濃縮し完成させた水飴状物質を、
ガラス瓶一瓶に保存し、カプセルに詰めて利佐子に服用させたと、検察官は主張
していますから、構成比率の相違は、体内吸収速度および比率の違い以外にあ
りません。
 

   トリカブト毒の吸収部位が小腸であることについて、東北大学のS教授は次の
 ような主旨の証言をする。
 
  トリカブト毒は植物塩基で、胃の中のような酸性の状況ではイオン化しており、
 胃の粘膜からの吸収はほとんど起こらない。吸収部位は、小腸粘膜で有る。
 
  また、東京大学のF教授は、次のような主旨の証言をする。
  トリカブト毒は植物アルカロイドで、胃の中では吸収されない。小腸に入ってか
 ら吸収される

 
 この証言からアコニチンもメサコニチンも吸収部位は小腸ですが、先ほどの囲
み記載の共同鑑定書の「三」 で、体内吸収速度はアコニチンとメサコニチンはほ
ぼ等しく(≧の記号)、比率も一対一と鑑定していますので、構成比率が相違す
る原因にはなりません。よって、密閉ガラス瓶と利佐子の保存血液のトリカブトは
別物です。
 検察官は、この事実に口を噤んでいましたが、私が控訴趣意書でこの事実を明
確にすると、答弁書で反論し、密閉ガラス瓶で保存している間に経年変化があっ
たこと、密閉ガラス瓶は水洗いされていることの二点を主張します。経年変化に
ついては、製薬会社のM研究室長が、「トリカブト毒をエタノールに漬けておいて
も数年間高い毒性を維持する」 と証言していますので、経年変換で構成比率が
大幅に変化するとは考えられません。また、水洗いとは、水で洗える部分を水で
流し去ることです。ゴムパッキングなどにこびり着いた水飴状物質を、アルコール
で抽出し鑑定したのです。水洗いとは関係有りません。検察官の反論は問題外
です。
 
検察官は、状況証拠についても、三つの事項についても、都合の悪いことには
無視または口をつぐみ、状況証拠を有罪と印象づけるために、深く掘り下げて検
討することもなく漠然としたものに誘導し、利佐子に関する問題については、利佐
子の具体的条件や動態を見詰めることもなく一般論にすり替えて、有罪との物語
を構成しました。このことは作為に満ちた空理空論だと指摘しておきます。


コメント:
この記事へのコメント:
コメント:を投稿する

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL
この記事へのトラックバック:
(C)Copyright 2003-2007. Powered By FC2. VALID HTML? VALID CSS?
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。