事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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全文-19 (2013/02/06(水) 19:08:31)
2012.01.24

 全文-19

 二 検察官は当事件をいかに描いてるか

 一九八一年七月、最初の妻恭子が心筋梗塞で死亡しました。逮捕後、警視庁捜査
一課も東京地検も、恭子の死については一切問題にしていません。裁判を通して検
察官も取り上げたことはないのです。恭子が病死であったことは、検察官が描く状況
証拠が、恭子が死亡したのちから、語りはじめることでも明らかです。
当時私は東京都台東区根岸の三DKのマンションに住んでいましたが、恭子との
思い出の深いそのマンションを売却するために、同年十月に荒川区所在のコーポT
を賃借し住居とします。翌一九八二年六月、二度目の妻となるなつ江が、虎の門病院
に最初の入院をし、それを機会に、なつ江の住居である豊島区西池袋の2LDKのマ
ンション(私の持ち家)でなつ江と同棲します。なつ江とは同棲後すぐに結婚し、西池
袋の同マンションを住居とします。

 私は発病後のなつ江の看病に気を遣い過ぎ、当時設立準備をしていた総菜会社の
作業が進みません。なつ江と相談し、平日の昼間だけコーポTを事務所として使用し
ます。作業と言っても経営企画書の作成が主なもので、二KのコーポTでは広く無駄
なので、一九八三年九月からは同じ荒川区内の六畳一間のアパートSに移ります。
このコーポTとアパートSを使用して、私がトリカブト毒とフグ毒を抽出・濃縮して保
存していたと、検察官は話を組み立て、私が別目的で購入した七種について、両毒を
得るために購入したと、それぞれの購入内容を次のように主張します。

 トリカブトについては、検察官は、私が一九八一年一一月ころから翌一九八二年九
月ころにかけて、福島県西白河郡所在の山野草販売店Kから、四、五回にわたって
トリカブト(アコニチン系アルカロイドであるアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、
ジェサコニチンの猛毒成分) を含むキンポウゲ科植物のトリカブトの鉢植えを、一九八
一年十一月六鉢、一九八二年七月二五鉢、同年八月から九月まで三一鉢、合計六二鉢購入
したと、仕入伝票をたどりながら行った、販売店Kの主人の証言をもとに主張します。

 クサフグについては、一九八四年三月ころから翌一九八五年秋ころまでに六、七回
に渡り、神奈川県横須賀市で漁業を営むM から、一九八四年三月ころ約三〇匹、そ
の後間もなく約六〇匹、夏前に二〇〇匹ないし三〇〇匹、秋に約三〇〇匹、一九五
四年ママ(一九八五年か?)四月に二〇〇匹ないし三〇〇匹、秋ころに約二〇〇匹、
合計一二〇〇匹の内蔵に猛毒(テトロトドキシン)を持つクサフグを、一匹一〇〇〇円
で購入していると、M氏などの証言をもとに主張します。

 エバポレーターの購入については、逮捕後の取り調べで、総菜会社の説明に必要
なため、私が自ら供述しています。私の供述は、購入先、購入目的および数量で、一
九七九年に一式、一九八二年六月に一式、同年七月にガラスセット一式、一九八三
年三月に一式です。捜査当局は販売店の東京都千代田区所在のT株式会社で事情
聴取し、伝票の保存のない最初の購入以外は確認できたと私に伝えます。公判での
検察官の主張は、最初の購入を除いたものでした。

 マウスの購入についても、逮捕後の取り調べで、同じ理由から、私が自ら供述して
います。私の供述は、一九八三年十一月か十二月に池袋のペットショップから五匹、
翌一九八四年二または三月に東京都練馬区所在の実験動物販売会社株式会社N
から五〇匹(最小販売単位)、一九八五年六月または七月に同Nから五〇匹、一九
八六年四月二十六日に大阪府所在の実験動物を販売するA店から五〇匹(最小販
売単位)です。捜査当局は株式会社Nに事情聴取しますが、私が購入したことは確認
できても、伝票が見つからず詳しいことはわかりません。A店では、私の供述どおりに
確認できます。公判での検察官の主張は、私の供述のとおりでした。

 カプセルとエタノールの購入については、逮捕後の取り調べの成り行きから、私が
事務所としていたアパートの、最寄りの駅前にある薬H店が特定されます。公判で薬
H店の店長が証言して、その証言をもとに検察官は、カプセルは、一九八四年七月以
前から翌一九八五年十、十一月ころまでの、一、二年の間に、風邪薬のフルカントジ
ン(ニトロカプセル入り) および強肝剤のレバゴルトV(六〇カプセル入り)、鎮痙剤の
パボランカプセル(一二カプセル入り) を週に一、二回の割合で購入し、同年九月こ
ろ製造中止になったパボランカプセルの在庫品の全部七,八箱をまとめて購入してい
る。エタノールは、同時期に、数回にわたり五〇〇ml入り無水エタノール (消毒用で
茶色い半透明のガラス瓶《遮光瓶》 に入っており、ラベルにもその旨明示されてい
る) を購入したと主張します。

 メタノールの購入については、薬H店では販売しておらず、捜査当局が斜め向かい
にあるJ薬局で事情聴取して明らかになります。その内容は、エタノールの購入とほ
ぼ同じ時期、多数回にわたり、五〇〇ml入りメタノール (燃料用で、白いポリ容器に
入っており、ラベルもその旨表示されている) を多数購入していたこと、その間、
「毒物および劇物譲受書」 によって確認された購入が、一九八四年六月一四日から
翌一九八五年六月五日まで七回にわたり合計二六本あること、検察官は公判で、こ
の事情聴取の内容を主張します。
以上の購入品を材料にして、検察官は私の事件を組み立てました。

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