事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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全文-07 (2013/01/25(金) 06:03:06)
07-2011.11.17

全文-07

 第二回、第三回公判において、利佐子を解剖し血液を保管した筑波大学O助教授
の証人尋問が行われました。血液の鑑定はO助教授が行ったのではなく、東北大学
のM教授で、O助教授はその鑑定報告書にもとづく証言でした。
O助教授の証言を簡潔に示します。解剖直後は、病死だろうという気持ちは変わり
ありません。利佐子の死亡から10日ほどたった6月初め、写真週刊誌の記者から、
利佐子が高額の生命保険に加入していると聞き、死因として薬物の可能性も充分に
検討しなければと思います。助教授は、独りで考えていても、らちが明かないと、
7月10日、研究室の先生方四人とその他研究員六、七名を集めて検討会を行います。
多くの薬物をリストアップした中に、誰が言い出したか記憶にないとのことですが、
トリカブト毒もリストに入りました。
一回だけ行われた検討会でトリカブト毒が浮かび上がり、O助教授は九月末ぐらい
に東北大学からトリカブトを取り寄せ、根を薄く切ってシャーレの中に並べてエタノー
ルを注ぎ2、3週間放置します。翌年一月二十日ころ、その抽出液を犬になめさせ、中
毒を起こした犬の血液を東北大学M教授に送りました。鑑定の結果、血液からトリカ
ブト毒が検出されます。

 第四回、第五回公判において、利佐子の保存血液の鑑定を検察側に依頼されて、
フグ毒を検出した東京大学N講師の証人尋問がありました。
利佐子の死亡から約五年、逮捕から一か月後の一九九一年七月、鑑定のため、試
験管に入った血液を封筒に入れて東京大学に警察官が持ち込みます。N講師はそれ
から鑑定をはじめ、血液からフグ毒を検出し定量も行っています。第四回公判はこの
年の一二月ですが、鑑定の進め方、定量分析の方法、致死量を含む草フグの肝臓の
量、肝臓からメタノールを溶媒として抽出・濃縮した物質がどろどろ状になることを明
らかにし、どろどろ状物質を更に精製するには、特殊な機器と薬品、それに高度な技
術が必要だと証言します。
両毒の鑑定内容の四回の公判を経過して、私の気持ちはしだいに追い詰められて
いきます。その後の公判は、逮捕されて取り調べを受けたとき、私が無実を明らかに
したいために供述した、六種類の購入品の購入理由を、検察官は全て裏返しにして、
極悪人としての私の立場を固めようとした公判でした。

 トリカブトの購入は、福島県白川郡所在の山野草販売店野天著を承認として召喚
し、購入の日と数量について、仕入れ伝票から、一九八一年十一月ころから翌年九月
ころまでの間、四,五回にわたり、鉢植えのトリカブトを合計六十二鉢購入したと証
言させます。実際には、私は一九八二年六月下旬から同年九月上旬の間に三回五十二鉢
を購入しています。証言と実際の相違である、一九八一年一一月ころの購入が、なつ江
の発症にかかわる、検察側の立証に重要な役割を果たしていることに、控訴審の準備中
に私は気がつきます。

 クサフグの購入は、神奈川県横須賀市で漁業を営むM氏と、そこで従事している人
を、証人として召喚し、購入の日と数量について、一九八四年三月から翌一九八五年
秋ころまでの間、6、7回にわたり、約千二百匹を購入したとの証言を得ます。
実際には、私は一九八四年四月から翌年六月までの間、六回にわたり、千八十匹
ほど購入します。
証言と実際の相違である一九八五年秋ころは、後に記述するように、この時期マウ
スは購入しておらず、検察官が主張するマウスによるフグ毒の効能実験はできない
のです。この証言を検察側は是認しますが、主張に一貫性がないと言えます。

 カプセルの購入は、東京都荒川区所在の薬H店の店員をしょうにんとして召喚し、
風邪薬のフルカントジン、強壮剤のレバゴルトV、鎮痙剤のパボランカプセル、のカプ
セル入りの薬を週に一、二回の割合で購入していたこと、一九八五年九月ころには、
製造中止となったパボランカプセルの在庫品の全部七、八個をまとめて購入したとの
証言を得ます。
実際には、薬H店の関連会社が製造したと店員に勧められて、フルカントジンを
一、二回、同じ理由で勧められたレバゴルトVを、私が試用してみようと数か月間購入
します。パボランカプセルは、なつ江が腹痛のときの常備薬として年に四箱ほど買い
置きし製造中止と聞いて在庫品を七箱ないし八箱を購入します。
パボランカプセルは一箱十二カプセル入りですが、検察官は利佐子がトリカブト毒と
フグ毒をカプセルで服用したことを強調したいために、カプセルの購入を印象づけよう
としたのです。利佐子が服用したとされるカプセルは一個です。それが目的なら、なぜ
百個近いカプセルを購入する必要があるのでしょうか。

 メタノールとエタノールの購入については、逮捕後の取り調べで、消毒用のエタノー
ルの話はしますが、私がどのように供述したか記憶が定かでありませんので、実際の
購入について記述します。
消毒用にエタノールを薬H店から購入しますが、早朝で薬H店が開店前のときは、
斜め向かいのJ薬局から購入しました。ところが間違えて、J薬局から購入したのはメタノールでした。
購入した日と数量は、一九八二年七月から一九八五年九月までの三年二か月の間に、月五本から六本、
五〇〇ミリリットル入り容器で一九五本ないし二百三十四本購入します。
検察官の主張は、私がアルコールを使用して、トリカブトの塊根とクサフグの肝臓から毒を抽出した
ということなので、消毒用にメタノールを誤って購入したことは、大変不利に働きます。


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