事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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全文-42 (2013/03/12(火) 00:00:41)
2012.06.06

 全文-42
 
 利佐子がトリカブト中毒で死亡したと仮定すると、〔二つの時間〕 および〔第一の
条件〕 から〔第四の条件〕 までの五つの条件で、利佐子がカプセルを服用してか
ら心肺停止に至るまでの、血中濃度時間曲線の動態が確定します。これ以外に、
条件は一切ありません。
次の「血中濃度が事実を語る」 で明らかにする〔第五の条件〕 は、発症時の血
中濃度がどの程度かということを、五つの症例を検討することによって導き出す条
件ですが、この〔第五の条件〕 と比較するために、図1の〔第五の条件〕 である利
佐子の行動から特徴的な時点を取り上げて、その時刻の血中濃度の計算方法を
示します。
 
42-1 引用 P307-P308
 
図1のグラフの「第五の条件」の血中濃度「y」の算出方法
「y」を、グラフの曲線上で算出できるとよいが、曲線がどの程度上に膨らむか
定かでなく、また曲線から直接計算式を立てる方法を私は知らないので、簡便な
方法として、曲線を暫定的に直線に置き換えて、図ーのようにc点から原点Oに直
線を引いて、その直線上で経過時聞に対する血中濃度を計算し、その結果を曲
線に還元する方法を採る。
計算対象は直線だから、原点Oからc点までのこの直線上のどの地点を取って
も、それに対応するX軸とY軸のそれぞれの地点は正比例する。吸収開始から心
肺停止までの時間を「a」、心肺停止時の血中濃度を「b」とし、吸収開始からの経
過時間を「x」、経過時間に対する血中濃度を「y」とした場合、図1に示すように次
の式が成り立つ。
この式に、吸収開始から心肺停止までの時間「aに六七分間」、心肺停止時の
血中濃度「bに一二五・七ng/ml」、吸収開始から発症までの経過時間「xに二四分
間」 を代入すると、直線上での発症時の血中濃度「y」は「四五・Ong/ml 」と求め
られる。
この値を曲線上に還元する必要があるが、グラフを見ると明らかなように、曲線
上ではさらに高い血中濃度を示している。よって、「以上」とすることによって上に
膨らむ曲線である場合は、すべてを満たすことになる。図1の表の最下段に記した
ように、発症時の血中濃度は「四五・Ong/ml以上」となる。
図2ないし図4のグラフを見るとわかるが、心肺停止時の血中濃度が「第四の条
件」で説明したように二一五・七ng/ml以上であるなら、「第一の条件」および「第
二の条件」で明らかにしている上に膨らむ曲線である場合、曲線が図2ないし図4
のような軌跡を描いても、発症時の血中濃度はさらに高くなるだけだ。なお、図5
のグラフになることは、利佐子の場合は可能性がないことは「第四の条件」で説明
したとおりである。
以上の計算方法で、図1のX軸上の吸収開始からの経過時間に対応する、Y軸
上のどの地点での血中濃度でも算出できる。
また、Y軸上で血中濃度を二Ong/mlならそのように、ある値を「y」として決める
と、それに対応する吸収開始からの経過時聞が算出でき、「二つの時間」を加味
して、利佐子のカプセル服用の時刻が確定する。
 
この計算方法によって、図1に示すように、発症時の利佐子の血中濃度は四五
.0ng/ml以上となり、それ以前のVホテルに到着したころは二二.五ng/ml以上、チ
ェックインを終了したころは三七.五ng/ml以上に上昇しています。さて、この血中
濃度を、五つの症例から導くことができる、トリカブト中毒の発症時の血中濃度と比
較すると、どのようなことが明白になるでしょうか。

 血中濃度が事実を語る

 五つの条件から導き出した〔第五の条件〕 の説明からはじめます。
 〔第五の条件〕
 「トリカブト毒とフグ毒の拮抗作用がない場合は、利佐子はカプセルが溶解して
から五分が経過するか、または五分が経過してからトリカブト毒の血中濃度が一〇
ng/mlに上昇するまでには発症していると確定できるが、トリカブト毒とフグ毒の拮
抗作用が最大限にある場合は、利佐子はカプセルが溶解してから一〇分が経過
するかまたは一〇分が経過してからトリカブト毒の血中濃度が二〇ng/mに上昇す
るまでには発症していると確定できる。」
 共同鑑定書の五つの症例と両毒の拮抗作用についての鑑定結果を検討すると
、〔第五の条件〕 のように、トリカブト中毒の発症に至る最短時間と、発症時の血
中濃度が推定できます。
 トリカブト中毒の発症に至る最短時間には、「タイムラグ」 が絡むことは、先に説
明しましたが、再度確認しますと、心室の細胞膜にあるナトリウムチャンネルの受
容体2番に、ある量だけ結合すると、心電図異常が確認され、その結合が進むと
心室細動が現れ死に至ります。この結合が閾値(反応や変化を起こさせるに必要
な最小の値) に達するまでの時間と、血中濃度の上昇とは、必ずしも一致するわ
けではありません。この差がタイムラグと呼ばれるもので、「第五の条件」 を、発症
に至る最短時間と、発症時の血中濃度に分けて検討する一つの要因です。

 これに関するM教授の証言を再確認しておきます。
 
42-2 引用 P214
 
薬物の薬理作用について、東北大学のM教授は次のような主旨の証言をしてい
る。
一般的には、薬物作用を及ぼす器官、組織にはその薬物に対する受容体(リセ
プター) というものが存在し、薬物が血液で運ばれて体内をぐるぐると回り、その
薬物が、たとえば心臓のリセプターに一個付いただけでは発現しないが、閾値と
いうのがあり、閾値を超えた量、その薬物が薬理作用を及ぼす特定の器官、組織
のリセプターに付くと症状が現れてくる。その現れ方も薬物によっては急激に現れ
てくるし、薬物によってはゆっくり現れるということがある。
薬理効果を示す濃度と、血中の濃度は、かならずしもパラレル(平行)ではな
い。血中濃度が先行して、それから薬理作用を及ぼす器官、組織の濃度が高くな
る。それには相当時間のタイムラグがある。

 五つの症例のうち血中濃度の測定結果が明らかにされているのは、症例2の男
性、症例3の男性、症例4の女性、症例5の八名の一一名ですが、その一一名の
血中濃度の測定を行ったM教授や共同鑑定人のS教授の証言の主旨と、共同鑑
定書に添付されている参考資料から関係事項を次の示します。
 
42-3 引用 P309-P311
 
共同鑑定書の五つの症例一一名のトリカブト毒の血中濃度の測定結果
[症例2の男性]
「死亡後司法解剖が行われ、胃内容物、血葉、尿中より致死量をこえるアコニ
チン系アルカロイドが検出された」 と、参考資料2に記載されている。
「死亡後の血液の血中濃度は、ジエサコニチンが四三三ng/ml 、アコニチンが五
ng/ml、合わせて四三八時/耐と記憶している」と、M教授は証言している。
[症例3の男性]
「服用二時間後の午前九時に採血して、分離した血清の血中濃度は、六・三
五八ng/ml」と、参考資料3に記載されている。
「症例3の男性の場合は、採血後も血中濃度の上昇は続いていたと考えられ
る」 と、S教授は証言している。
[症例4の女性]
「血液中のアコニチン濃度の変化を、血液吸着療法中を含め服用三五日後ま
で測定した」と、参考資料4に記載されている。
「血中濃度は、血中でいろいろと動いているが、三Oから四Ong/mlぐらいだ」
「三Oから四Ong/mlぐらいで、もしかしたら救急救命処置を取らなければあるい
は亡くなっていたかもしれないと思われる。これは想像だが、その辺の値か一OO
ng/mlあたりが、将来、体重を掛けるということではなく、その量で致死量というこ
とが採用されると思う」と、M教授は証言している。
[症例5の八名]
「一一名とも受診時は心電図上正常波形であったが、その後心室性期外収縮
が出現し心室性頻拍へ移行した。胃洗浄やリドカインの投与などで、摂取五時
間後心電図波形の正常化及び自覚症状の軽快をみた。残り六名のうち三名は
入院、三名は外来で下剤の投与を受け症状の軽快をみた」 「全員の血清を受
診時に採取し、現在血中アコニチン濃度を分析中である」 と、参考資料5に記
載されている。
「症例5では、二人の人が中毒して入院したわけで、詳しいことは忘れたが、そ
の日か翌日の血液の濃度を調べると、トータルで一ng/ml程度であり、その程度
で中毒している」 と、M教授は証言している。

 発症前の血中濃度を探る手がかりはこれ以外に裁判では示されていませんが、
一一名もの血中濃度の実例があるなら充分だと思います。発症時の血中濃度を
検討する場合、個人差が問題となります。
そこでよく考えてみると、血中濃度で発症を捉えるなら、この血中濃度の値に個人
差が含まれることになり、大変便利です。たとえば、発症時間の個人差を問題にす
る場合には空腹状態か満腹状態かで大幅な差が出ます。しかし、発症時の血中
濃度という表現なら、四ng/mlで発症しても、六ng/mlで発症しても、空腹か満腹か
ということは血中濃度の上昇の動態に含まれており、考慮する必要はありません。
 そして、その発症時の血中濃度の個人差を問題にする場合、次のような本来の
体質的な個人差に分類できます。トリカブト毒の血中濃度と薬理作用を及ぼす器
官・組織の受容体への結び付きの差としてのタイムラグや、それにかかわる発症に
至る閾値などを考慮したとき、ある人は二ng/mlで発症し、別の人は二〇ng/mlで
発症するというほどの個人差があるなら、よほど多くの人を対象にして発症時の血
中濃度を検討しなければなりませんが、一〇人ほどの人数を検討した結果、発症
時の血中濃度が全員一〇ng/mlまでに収まるなら、この一〇ng/mlを発症時の血
中濃度の上限と定めても、一切齟齬を来しません。五つの症例の一一名の測定結
果は、まさにこのような状況を表しており、一一名の血中濃度をもって、個人差を考
慮に入れての発症時の血中濃度の範囲を確定させ、一〇ng/mlをその上限と決め
ても正当と言えます。この点を一一名について説明いたします。
 
 なお。血中濃度の上昇とともに受容体への結合が多くなり,ある閾値を超えたと
き発症するわけですから、血中濃度が先行して、それから各器官や組織の濃度が
高くなるとしても、閾値を超えて発症した時点での血中濃度が、発症時の血中濃度
であると確定してなんら矛盾は生じません。閾値の個人差は、発症時の血中濃度
の個人差として現れてきます。

 それでは一一名について、「五つの症例」 の症状のあり方を参考にしながら、
血中濃度の測定結果を検討しますが、「症例2の男性」 は測定された血中濃度が
他の症例とは比較にならないほど多量で、タイムラグの影響が関係してくるので最後
に検討することにしています。
 
42-4 引用 P180-P182
トリカブト中毒の五つの症例
 
[症例1]
 平成元年四月、男性医師(五十二歳) が採取した山菜(トリカブトをニリン草と
誤認) をおひたしにして医師は小皿に一皿、その長男(十七歳 )は二つまみほど
食した(同午後六時五分)。医師は食直後から舌のしびれを感じていたが、同六時
四十分から外出し同七時五分帰宅直後長男が口、手、足の痺れを訴えたのでト
リカブト中毒と直感し、強制嘔吐、医薬品の投与、人工透析等の処置を行った。
医師は同午後九時から不整脈が現われ、同午後十時には血圧が七0mmHgまで
低下、冷汗、皮膚温低下、悪心、嘔吐が続いた。同午後十時から十一時頃が最
も症状が強かった。また、痺れは翌朝四時前まで続いた。一方、長男は同午後七
時すぎには不整脈が出現したが同午後十一時頃には回復した。痺れ感も翌朝二
時には消失した。記録された心電図によると長男は医師よりも危険な不整脈を伴
っていた。医師は摂取量が多く症状は末期に近かったにも拘わらず、心電図所見
で軽症であったのは、医師が高血圧のために服用している持続型の抗カルシウ
ム剤アダラーL(一日三0mgを二回服用) のためではないかと推察している。
 
[症例2]
 平成元年八月、男性(四十四歳) は郵送されてきたクズモチを十切れ、その娘
(四歳) は一切れ半食した。男性は五分後に口及び体のしびれを感じ、摂取二十
分後に来院した。来院時不穏状態で発汗嘔吐があり、足の麻療があった。鎮静
目的で医薬品を投与したところ、呼吸抑制がみられたため人工呼吸を開始した。
この前後より大腿動脈の拍動触知不能となり、致死的不整脈を発症していたの
で、心肺蘇生術及び各種の医薬品による治療を行ったが、心停止となり、来院後
四時間で死亡した。
その娘は、摂取五分後に口、手足のしびれを訴え、やがて歩行困難となり摂取
二十分後に来院した。受診時不整脈は認められなかったが、その五分後に悪心
嘔吐及び不整脈が出現した。直ちに、胃洗浄や医薬品の投与等の処置を行っ
た。その後、血圧低下、痙攣発作及び呼吸停止を起こしたため人工呼吸を施行し
たところすぐに回復した。その後医薬品の投与等の処置を行い、来院後九時間で
不整脈は回復し、全身状態も安定した。
 
〔症例3]
 平成四年四月、午前七時、男性(四十五歳)がトリカブトの根と茎を細切りし浸し
ておいた水溶液を自殺目的で服用し、同午前七時三十分に来院した。来院時の
主訴は口唇周囲のしびれ感であった。同午前七時四十五分に胃洗浄や下剤投
与等の処置を行ったが、同午前八時二十分には不整脈が現われ、呼吸停止にい
たった。人工呼吸及び医薬品投与等の処置を行った結果、自発呼吸が戻り同午
前八時四十七分には不整脈は消失した。同午前九時から同日夕刻まではわず
かに心室性期外収縮を認めるのみであった。
 
[症例4]
 平成四年二月、昼、女性(六十一歳)が自殺目的でトリカブトの根を食し、同十
二時三十五分救急外来を受診した。受診時、譜妄状態で血圧低下(七0mmHg)、
瞳孔散大、流誕、下痢、嘔吐が認められ、同十二時五十五分、突然、致死的不
整脈を発症した。直ちに、心肺蘇生術及び各種の不整脈剤による治療を行った
が、不整脈、心停止を頻回繰り返した。そこで心肺蘇生術施行下に血液吸着療
法を行った結果、開始後約二十分頃より不整脈や心停止等の頻度が減少し、硫
酸マグネシウムによる不整脈のコントロールが可能となった。翌朝には致死的不
整脈は消失したが、心室性期外収縮は翌朝以降も持続した。
 
[症例5〕
 平成五年四月、四家族八名が付近の山より採取した山菜(トリカブトをモミジガ
サと誤認) をおひたしにして食した。摂取約二十分後全員に舌先端部にしびれを
感じ、その後しびれ感は体幹及び上肢に拡がった。八名中二名は摂取三十分な
いし二時間後に前胸部不快感、嘔吐及び呼吸困難を訴え病院で受診した。受診
時は不整脈はなかったが、その後不整脈が現われた。胃洗浄などの処置により、
摂取五時間後不整脈は回復し自覚症状も軽快した。
42-5 引用 P309-P311
 
共同鑑定書の五つの症例一一名のトリカブト毒の血中濃度の測定結果
[症例2の男性]
 「死亡後司法解剖が行われ、胃内容物、血葉、尿中より致死量をこえるアコニ
チン系アルカロイドが検出された」と、参考資料2に記載されている。
「死亡後の血液の血中濃度は、ジェサコニチンが四三三ng/ml 、アコニチンが
五ng/ml、合わせて四三八ng/mlと記憶している」と、M教授は証言している。
[症例3の男性]
 「服用二時間後の午前九時に採血して、分離した血清の血中濃度は、六・三五
八ng/ml」と、参考資料3に記載されている。
「症例3の男性の場合は、採血後も血中濃度の上昇は続いていたと考えられる」
と、S教授は証言している。
[症例4の女性]
 「血液中のアコニチン濃度の変化を、血液吸着療法中を含め服用三五日後ま
で測定した」と、参考資料4に記載されている。
「血中濃度は、血中でいろいろと動いているが、三Oから四Ong/mlぐらいだ」
「三Oから四Ong/mlぐらいで、もしかしたら救急救命処置を取らなければあるい
は亡くなっていたかもしれないと思われる。これは想像だが、その辺の値から一
OOng/mlあたりが、将来、体重を掛けるということではなく、その量で致死量という
ことが採用されると思う」 と、M教授は証言している。
[症例5の八名]
 「二名とも受診時は心電図上正常波形であったが、その後心室性期外収縮が
出現し心室性頻拍へ移行した。胃洗浄やリドカインの投与などで、摂取五時間後
心電図波形の正常化及び自覚症の軽快をみた。残り六名のうち三名は入院、三名
は外来で下剤の投与を受け症状の軽快をみた」 「全員の血清を受診時に採取し、
現在血中アコニチン濃度を分析中である」と、参考資料5に記載されている。
「症例5では、二人の人が中毒して入院したわけで、詳しいことは忘れたが、その
日か翌日の血液の濃度を調べると、トータルで一ng/ml程度であり、その程度で
中毒している」と、M教授は証言している。
 
 「症例3の男性」は、摂取二時間後の血中濃度が血清で六.四ng/mlです。血清
と血液の関係については、私が鑑定書などから、血清は血液の六〇%程度になる
と計算して法廷でM教授に質問しましたが、
 M教授は、「人によって大きな差はないと思う」 
と答えていることから、六〇%で概算すると、この男性の血液に換算した血中濃度
は約四ng/mlとなります。この男性の発症が、どの時点かということは明確ではありません。
しかし、採血の四〇分前、摂取から一時間二〇分後に心室性頻拍が現れ、その不整脈が三〇
分続き、その一〇分後に採血しています。



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全文-43 (2013/03/12(火) 00:54:49)
2012.06.11

 全文-43
 
 この採血の時点の血中濃度を参考として、トリカブト毒の血中濃度時間曲線の
動態を、東北大学二教授の証言を考慮しながら、実際を明らかにするために、図3
を利用して検討します。
 
43-1 引用 P294
 
トリカブト毒のグラフに描かれる血中濃度時間曲線について、血中濃度を縦軸
(Y軸)、時間の経過を横軸(X軸)で表示した場合、O教授は、「ある程度まで急に上
昇し、ある程度からだんだん下がっていくような、上に膨らみを持つ曲線になる」と
証言し、S教授は、「西洋の釣鐘のような形で、左右対称ではなくて、吸収のほう
が非常に上がっていき、ある時間はゼロで、それからなだらかに下がっていく」 と
証言している。

グラフ 
 画像クリックで拡大します 

 図3の0点を服用した午前七時、a点を午前九時、最高血中濃度(曲線の山の
頂上) を不整脈が現れた午前八時二〇分、b点を血中濃度四ng/mlとして検討す
ると、最高血中濃度が五ng/ml(bの四分の一をbに重ねる) を越えた場合、最高
血中濃度から下降する曲線は、上昇の時の曲線と同じように急で、なだらかには
下がりません。
 
43-2 引用 P287

 
よって、この男性の血中濃度は五ng/ml以上には上昇しておらず、当然、発症
時の血中濃度は五ng/ml以下ということになります。
なおS教授は、「採決後も血中濃度の上昇は続いていたと考えられる」 と証言して
いますが、それが正しいとすれば採血以前の血中濃度は四ng/ml以下ということ
になり、発症時の血中濃度はさらに低くなります。どちらにしても、この男性の場合
、一〇ng/mlまで、血中濃度が到達しているということはありえません。

 「症例4の女性」 は、発症の時刻が明らかにされていません。M教授はこの女
性の血中濃度を「三十から四十ng/mlぐらいだった」 と証言しています。これは血
液吸着療法中に採血した血液の血中濃度と解されますが、それまでに不整脈や
心肺停止を数回繰り返して、血液吸着療法開始後二〇分ころより回復に向かうこ
とから、血液吸着療法を行うまでは、血中濃度は上昇していたと考えられます。そ
うすると、血液吸着療法中の血中濃度が三十ないし四十ng/mlであるので、摂取
五分後の血中濃度は三十ng/ml近辺まで上昇していたと推定できます。それで
は、摂取五分後の血中濃度を三十ng/mlと推定して発症時の血中濃度を検討して
みます。この女性の場合は、図1を利用して、図1のa点から五五分後の午前一二
時五五分、b点の血中濃度を三十ng/mlと設定します。
 
43-3 引用 P286

 吸収開始から発症までの経過時間xが問題となります。この女性は、摂取から
三五分後には末期の症状が出現していますが、この時間の経過に伴う症状の出
現のあり方は、症例2の男性とその娘に極めて似ています。このことから、この女
性も摂取から五分程度で発症していると推定しても、それほど相違しないと思いま
す。その場合の血中濃度を計算してみます。計算式 ay=bx のaに五五分、bに三
〇ng/ml、xに五分を代入して計算すると、yは約三ng/mlとなり、これを曲線に還
元すると四ng/mlくらいとなります。ただしこの場合、胃内容排出時間は瞬間的と
仮定してxは五分としていますが、胃内容排出時間が二分かかったとするとxは三
分となり、yは約二ng/mlとなります。
また、胃内容排出時間が瞬間的と仮定して、この女性の摂取から発症までの経
過時間が症例2の二名の二倍もかかり、xが一〇分になったとしても、発症時の血
中濃度yは八ng/mlとなります。発症時間が一〇分を越えることは、この女性の症
状の出現のあり方を症例2の二名と比較すれば考えられることではありません。よ
って、この女性は血中濃度が一〇ng/mlに上昇する以前に発症していることは確
実に言えることです。

 「症例5の八名」 は発症後に受診し、その受診前に全員から採血した血液のト
リカブト毒の血中濃度が測定されています。
この測定結果についてのM教授の証言は、もうひとつはっきりしません。「その
日か翌日の血液の濃度を調べると」 との証言は、共同鑑定書参考資料5に、「受
診時に採取」 と記載されていますから、「その日」 であることは間違いありません
また、「トータルで一ng/ml程度あり」 との証言は、もっとも症状の重かった二名
のことなのか、八名全員のことなのか、はっきりしませんが、「トータルで」 と言って
いることから八名全員と理解するのが順当で、八名全員の血中濃度が一ng/ml程
度と判断して間違いありません。
 八名全員、受診時に採血したと参考資料に5に記載されていますが、その受診
時について、二名以外は摂取からの経過時間は「症例5」 にも記載されておらず
発症時の血中濃度を算出する手がかりはありませんが、採血の時に血中濃度が
上昇中であればもちろんのこと、下降中であっても、症例3の男性のところで説明し
たように、S教授の証言から血中濃度が急激に下降しているとは考えられず、発症
時の血中濃度は八名全員が一ng/ml程度、またはそれ以下と推定して矛盾はあり
ません。まして、発症時の血中濃度が五ng/mlまで上昇していた、などということは
ありえません。
 この症例5について注目すべきことは、八名全員が血中濃度一ng/ml程度で発
症していることです。トリカブト中毒においては、この程度の低濃度で発症すること
を如実に示しており、本来の体質的な個人差はあまりないことが明らかだと言えま
す。また、摂取から発症までの経過時間の相違は、主に、抽出エキスなのか、山菜
と誤認した葉の摂取なのか、などの摂取の形態や、空腹か満腹かという胃の状態
に起因することを明確に示しています。
 
ここで、「症例1の医師とその長男」 について説明しておきます。

 検察官は第二十八回公判におけるM教授との質疑応答で、「死戦期の不整脈
(心室性頻拍) が出現した長男より、何倍か多く摂取した医師は、致死量を超え
た服毒をしていたと考えられるのに冷汗や悪心、嘔吐の症状は摂取から四時間後
に出現している。」 と指摘した上で、「五つの症例を検討すると、非常に個人差が
大きい」 と結論づけ、M教授も同意します。この結論などは、本来の体質的な個
人差と、摂取の形態や胃の状態を、区分して検討することを怠り、この二つの要因
をごちゃまぜにし検討した結果といえます。
 第一、   医師が致死量を超えて服毒したという指摘が間違っています。長男に現
れた不整脈は心室性頻拍で、症例5の二名を検討すればわかるように、一ng/ml
程度の血中濃度で心室性頻拍は出現するのです。それに、症例5の二名は、嘔吐
や呼吸困難といった中期の症状が現れているのに、共同鑑定書参考資料1による
と、この長男には中期の症状は現れていません。症状は症例5の二名より軽いの
です。不整脈の回復も、この長男は症例5の二名とほぼ同じです。この長男の血
中濃度が、症例5の二名と同じ一ng/ml程度と推定して矛盾はありません。

 なお、症例5のトリカブト中毒の発症は、私が逮捕された約二年後の一九九三
年四月です。「症例5の二名の血中濃度は、一ng/ml程度であり、その程度で中毒
している」 とのM教授の証言は、一九


**************************************************

この回で、神谷 力氏の再審請求の為の手記、
【事実の証明-1~6】及び【全文-1~43】を終わります。 
神谷氏によると主張の要旨は、【全文-38】 
を見ればわかりやすいとのことです。


(この回の文末が途切れてるのは、病に倒れた為)

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