事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
201302 << 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >> 201304
スポンサーサイト (--/--/--(--) --:--:--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
全文-39 (2013/03/04(月) 21:02:04)
2012.05.22

 全文-39 
 
テトロトドキシンが無毒のテトロドン酸に約九七,七%変換していますが(約三%
を占める4-エピテトロドトキシンは、証言がなく無毒か有毒かはわかりません) こ
こまで論じてきたその原因を、記述順に整理してみますと五項目になります。
    遺体で二二時間冷蔵保存されているあいだ
    長年にわたり冷凍保存されていたあいだ
    カプセルの服用時までにすでに変換していた
    発症から心肺停止までの四三分間のあいだ
    保存血液に混入されるまでに混入物がすでに変換していた
この五項目ですが、③④については、両毒の拮抗作用が、机上の空論であること
をすでに論じていますので説明は省略し、②①について詳しく説明した上で結論と
して、⑤が導かれることを明らかにします。
この説明の目的は、これらの問題が、かんぜんなアリバイの論拠に、大変寄与
することをお知らせしたいからです。

 利佐子から採取された血液は、公判開始の一九九一年一二月ころ、琉球大
学から、O教授の転勤先の日本大学に移され、冷凍保存されたと聞いていますが
、現在も保存されているなら、トリカブト毒およびフグ毒の成分を調べ直して、当時
の鑑定結果とほぼ等しければ、冷凍保存によるフグ毒の変換はないと証明できます。
トリカブト毒も調べる理由は、冷凍保存中に、何らかの理由で冷凍保存以外の環
境に、さらされた可能性がないか確認するためです。
 この両毒を調べ直した鑑定結果が、トリカブト毒の成分に変換はなく、フグ毒の
成分がテトロドン酸に100%変換している場合は、冷凍保存を行ってもフグ毒は変
換するという可能性を含むことになりますが、テトロトドキシンからテトロドン酸等へ
の変換は二.三%ですので、念のために鑑定で、冷凍保存中の変換であることを
確認する必要があります。また、両毒が共に変換している鑑定結果が出た場合と、
血液が保存されていない場合も、鑑定が必要です。
 鑑定の方法は、ヒトの保存血液にテトロトドキシンの純品を適量混入させて、混
入した時の変換も考慮してフグ毒の成分を測定した上で、一か月ほど冷凍保存し、
フグ毒の成分に変換がなければ、鑑定によって、「血液中に含まれるテトロトドキシ
ンは、冷凍保存することによって変換することはない」 ことが証明されます。

 次にF教授の、「死亡直後も酵素活性がまだ多少あるとすれば血中濃度は減る
だろう」 という証言を検討します。「酵素活性」 とは、生物体内に起こる化学反応
の触媒となる各種蛋白質を酵素と言い、その酵素が物質の化学分解や合成を起
こしやすい性質にあることが活性といいます。
 これは生体での酵素活性を念頭においた言葉で、遺体において、「未だ多少あ
るとすれば血中濃度は減るだろう」 とは、酵素活性が若干でも残っているとすれ
ば、遺体になってからの酵素活性によるテトロドトキシンからテトロドン酸等への変
換も、他の物質と同じように、微々たるものであろうということを示しています。
 この遺体における酵素活性による微々たる返還の問題と、血液中に含まれるフ
グ毒が冷凍保存によって変換しないことの証明を、合わせて立証すれば、有毒のト
リカブト三毒素の量一二五.七ng/mlに対して、有毒のテトロドトキシンの量が0.7
ng/mlと、大幅な差が、利佐子の心肺停止時に出ていることになります。
 利佐子がトリカブト中毒だと仮定してもその基盤である両毒の拮抗作用を成り立
たせている「有毒のトリカブト毒五に対して有毒のフグ毒六の比率」 という検察官
の主張と裁判官の認定の論拠が跡形もなく崩壊して、両毒の拮抗作用は適用でき
ず、結果としてトリカブト中毒ではないと完璧に論拠できますし約九七,七%テトロ
ドン酸に変換したフグ毒が、利佐子から採取された保管中の血液に、混入されたと
断定できます。さらに以上の結果から、同じようにトリカブト毒も、保管中に混入さ
れたと断言できます。

 この項で説明したことは、アリバイを完璧に証明する「第一の事項」を支える、重
要な要素になり得るものですし、「冷凍保存で血液中のテトロドトキシンが変換しな
い」 ことが立証されれば、この立証一つで完璧なアリバイとなる事項です。
 しかし、現在まで鑑定で立証されておらず、完璧な証明ができていないために、
この項以外で、この問題に関連するような説明を加えると、「第一の事項」 で意図
する筋道の、立証の積み重ねに、混乱を及ぼしかねないので、この項以外では説
明を避けています。

 体内総毒量を体重で換算する方法は理にかなっていると考えます。

 血中濃度に体重を乗じて体内総毒量を算出する方法は、第一審で疑問を呈す
る専門家もいましたが、目安として認めるという専門家が多数でした。
私は五年ほど前まで、科学月刊誌などを購読して読んでいましたが、近年、生
命体の研究は目覚ましい進歩を遂げ、複雑なシステムである生命体のメカニズム
の解明が進んでいます。そのなかで、ヒトの体の七〇%ほどを水分が占めているこ
とは、ほぼ定説となりました。また、血液の成分として、水分が約六〇%含まれてい
ると記憶していますが、その血液によって、酸素や栄養剤と共に、水分も全身に送
られて代謝を行います。
トリカブト毒およびフグ毒は水に馴染みますから、吸収された両毒は、血液中に含
まれる水分によって、全身の水分に代謝などにより均等に溶け込むと考えられま
す。両毒の血中濃度とは、血液の成分である約六〇%の水分に含まれる濃度で
す。血液の約六〇%の水分、全身の約七〇%の水分、血液と全身の、両毒を含む
水分の比率は幾らか違いますが、骨格などをそなえる全身の比重は、血液の比重
よりも若干多めとおもわれますので、その分を考慮し、目安として、血中濃度に体
重を乗じて体内総毒量を算出する方法は、理に適っていると考えます。

 両毒の拮抗作用について、血中濃度の動態という観点から説明します。

 心肺停止時のトリカブト毒の血中濃度は一二五.七ng/ml「以上」 となります
が、フグ毒はng/mlです。フグ毒は変換物質も含めて測定されていることから、
「以上」 を加える必要はなく、フグ毒がトリカブト毒の約五分の一から縮まることは
ありません。
O教授は、両毒をほぼ同量投与すると発症時間が約二倍延長するが、フグ毒の
量を減らすと、延長倍率も小さくなると証言しています。このことを血中濃度の動態
という観点から考察してみます。

スポンサーサイト
全文-40 (2013/03/04(月) 21:25:51)
 2012.05.29

 全文-40

 まず、カプセルを服用してから、血中濃度が上昇するまでの過程を見て見ましょう。

 両毒入りのカプセルを服用した場合、カプセルに両毒が詰められていても、カプセ
ルの溶解時間は変わりません。カプセルが溶解し両毒が溶出してからの胃内容排
出時間は、両毒が混合したからといって遅れることはありません。トリカブト毒の小
腸からの吸収は溶解拡散によって行われ、「類似薬品が複数存在していても相互
に干渉がない」 ということから、両毒が小腸に存在していても、互いに干渉するこ
とはなく、吸収は濃度の濃淡に従って円滑に行われます。よって、両毒の血中濃度
の上昇は、グラフの曲線に表すと、両毒とも上に膨らむスムーズな曲線になります。
 要するに、カプセルを服用してから、血中濃度の上昇までは、両毒はなんら干渉
することはなく、拮抗作用の影響は、ここまでは一切ありません。
 なお、フグ毒は胃からも吸収するのではないかという疑問はありますが、証言が
なく確認できません。ただし、〔第二の条件〕 のところで説明したように、カプセル
は服用後一三分後には溶解しますので、その時、カプセルがまだ胃にあったとして
も、溶出した内容物はすぐに小腸へ移行をはじめますので、フグ毒の胃での吸収
は若干となります。図1で表現すると、一二分後にフグ毒の血中濃度はなだらかに
立ち上がり、原点近辺で急に上昇していくことのなります。このことから、フグ毒が
胃から吸収するとしても、両毒の拮抗作用には影響はありません。

 次に血液に取り入れられたトリカブト毒とフグ毒の薬理作用を及ぼす器官.組織
の受容体への結び付き方が問題となりますが、それについては証言があります。
トリカブトを原料として漢方製剤を製造販売している製薬会社がありますが、その
会社のM研究室長は、「受容体の結合部位は四つに分かれていて、フグ毒の結合
部位は受容体部位1番、トリカブト毒の結合部位は受容体部位2番と、両毒に結合
部位は相違する」 という主旨の証言をしています。このことから、薬理作用を及ぼ
す器官.組織の受容体への結び付き方についても両毒は互いに干渉することなく、
ここでも拮抗作用の影響は現れないことになります。

 では、心臓における両毒の拮抗作用が、どのような原理で現れるかを簡単に説
明します。正常な心臓の拍動は、洞結部で発生する電気的刺激が心室に伝わり、
細胞膜の膜電位が上昇し閾値に達すると、細胞膜のナトリウムチャンネルが開い
て、プラスのナトリウムイオンが細胞内に急激に流入し、膜電位がプラス側に変化
して、カルシウムイオンが細胞内に急激に流入してきて心室の収縮が行われます。
その後放電がありナトリウムイオンなども細胞外に流出して、細胞膜もマイナスの
膜電位に戻ります。これが一回の拍動です。血液にトリカブト毒とフグ毒が存在すると、
トリカアブと毒は心室の細胞膜にあるナトリウムチャンネルの受容体2番に結合し、
フグ毒はナトリウムチャンネルの受容体1番に結合しますが、トリカブト毒はナトリウム
チャンネルを開くことにより興奮状態にするのに対して、フグ毒はこれを閉じることにより
興奮を抑制するすることになります。トリカブト毒が受容体2番に、ある量だけ結合すると、
心室の興奮状態が異常となり、心電図異常が確認されます。その結果が死に至る閾値
に達すると心室細動が現れ中毒死となります。両毒の拮抗作用は、右の場合に、フグ毒
が受容体1番に、いかに結合しているかによって拮抗作用の強さが変わります。

それでは、両毒の拮抗作用は、どのような段階に至って現れるのかを検討します。
 
40-1 引用 P214 
 
薬物の薬理作用について、東北大学のM教授は次のような主旨の証言をして
いる。
一般的には、薬物作用を及ぼす器官、組織にはその薬物に対する受容体(リセ
プター)というものが存在し、薬物が血液で運ばれて体内をぐるぐると回り、その薬
物が、たとえば心臓のリセプターに一個付いただけでは発現しないが、閾値という
のがあり、閾値を超えた量、その薬物が薬理作用を及ぼす特定の器官、組織の
リセプターに付くと症状が現れてくる。その現れ方も薬物によっては急激に現れて
くるし、薬物によってはゆっくり現れるということがある。
薬理効果を示す濃度と、血中の濃度は、かならずしもパラレル(平行)ではない
。血中濃度が先行して、それから薬理作用を及ぼす器官、組織の濃度が高くなる
、それには相当時間のタイムラグがある。
 
この証言がヒントになりますが、両毒の受容体への結合が進んでいく段階で拮
抗作用が現れ、その拮抗作用の強さは、両毒の受容体(リセプター)への結合す
る量の差に影響されます。
 東北大学のO教授は、「受容体の結合部位の親和性という点から、トリカブト毒
がフグ毒より長く結合している」 という主旨のの証言をしています。この証言とM
教授の証言を合わせて考えると、次のようなことが言えます。ただし、何個という結
合個数は仮定の話で、証言などに根拠を求めることはできません。なお、体重五〇
kgのヒトの両毒の致死量が二mgと同量であることも、受容体部位への結合個数と
、心電図異常が現れる閾値(反応や変化を起こさせるのに必要な最小の値) との
関係を考える場合に参考になると思います。たとえばトリカブト中毒では、摂取から
五分後に四個のトリカブト毒が受容体部位2番に結合して心電図異常が現れます。
 ところが血中にフグ毒が存在する場合、受容体部位1番にフグ毒も結合し、トリカブト毒
の効力を打ち消します。しかし、受容体部位への親和性により、トリカブト毒がフグ毒より
長く結合しているということですから、トリカブト毒がフグ毒より受容体部位への結合が早く、
遅くまで結合しているのです。両毒の血中濃度が同じでも、受容体部位への結合はフグ毒
が少なくなります。

 たとえに戻りますと、トリカブト毒は五分後に四個、一〇分後に八個結合しますが、
フグ毒は五分後に二個、一〇分後に四個結合します。すると、トリカブト毒から
フグ毒を差し引くと、トリカブト毒は五分後に二個、一〇分後に四個となり、一〇分
後に心電図異常が現れることになります。この結果、トリカブト毒を単独で服用した
場合に比べて、両毒の血中濃度が同じでも、親和性の違いから、両毒の拮抗作用
によって心電図異常が現れる時間が二倍に延長するのです。
 致死に至る時間についても同じことが言えます。トリカブト中毒では摂取から五
〇分後に、三〇個のトリカブト毒が受容体2番に結合して死亡するとします。ところ
が血中にフグ毒が同濃度存在し、五〇分後に一五個のフグ毒が受容体部位1番
に結合し、トリカブト毒の効力を打ち消します。この状態では、トリカブト毒が受容体
2番に一五個結合したときの心電図異常は現れますが、死には至りません。その
後、摂取から一時間四〇分後に、トリカブト毒が受容体に六〇個、フグ毒が三〇個
結合して死に至ります。
 両毒の拮抗作用を、このように単純化して考察すると、以外に理解しやすいと思
います。マウスやラットで両毒の拮抗作用の実験をしたO教授の次の証言は、フグ
毒の血中濃度が低ければ、それだけ受容体部位1番への結合が少なくなることが
理解できます。
 
40-2 引用 P226-P227
 
O教授は、両毒の投与比率を変えた場合の生存時間の延長について、次のよ
うな主旨の証言をしている。
アコニチンを致死量の約五倍投与するのに対して、同時投与するテトロドトキシ
ンの投与量を、致死量の一倍、二倍、三倍、四倍と変えて実験してみると、生存
時間の延長倍率は一・二倍とか一・五倍とか二倍とかに変わってくる。致死量の
約六倍の投与量は、比較的顕著に延長する投与量を選んでいる。
 
40-3 引用 P229
 
両毒をヒトに同時に投与したときの症状の現れ方について、O教授は次のよう
な主旨の証言をする。
両毒の拮抗作用により、投与から発症、発症から致死まで、経過時間がそれ
ぞれ平均的に約二倍に延長する。
両毒の桔抗作用があっても、症状は、初期、中期、末期と、順次出現する。
両毒の拮抗作用があっても、しびれ感などの初期症状が出現しないわけでは
なく、遅れるだけである。
 
また、この証言も、受容体への親和性の関係で、結合がトリカブト毒よりフグ毒
が弱いとしても、時間の経過に伴う両毒の受容体への結合が、正比例するように
結合していくと考えられることから当然のことと理解できます。



全文-41 (2013/03/04(月) 21:42:52)
 2012.06.04

 全文-41
 
 ただし、この証言で発症について触れていますが、私は発症については納得し
ていません。ここまでの説明は、フグ毒が心臓については、全く無害であることを前
提にしています。実際そのとおりですから、心臓疾患の発症である心電図異常の
現れ方における両毒の拮抗作用を論じたのです。しかし、フグ中毒は、他の症状に
ついてはトリカブト中毒と共通です。しびれ感、悪心、嘔吐、意識混濁、呼吸麻痺な
どはトリカブト中毒と共通した症状です。これらの症状に、両毒の拮抗作用がある
とすれば、当然、心臓の拮抗作用とはメカニズムが違うはずです。たとえば、フグ
毒を致死量以上、トリカブト毒の数倍同時に投与すれば、今度はハイの受容体へ
のフグ毒の結合で、呼吸麻痺で死亡することになります。トリカブト毒も肺について
は有毒ですから、心臓のような拮抗作用は現れません。このことは、しびれ感や嘔
吐など他の症状も同じだと思います。

 私は第一審で、O教授にこれらをしつこく質問しましたが、期待できる解答は得ら
れませんでした。それ以来、このことにこだわると話が進まなくなるので、やむを得
ず、「発症」 を「最初に自覚症状を訴えたとき」と厳密に規定して、O教授の証言を
取り入れ、発症についても両毒の拮抗作用について論じることにしました。
 マウスやラットを使用したO教授の実験では、両毒の投与比率をいろいろに変え
て投与し、フグ毒をトリカブト毒より少し多く投与して、生存時間が最大で約二倍に
延長したということに注目しなければなりません。両毒の受容体への結合という点
を考慮すれば、トリカブト毒とフグ毒の拮抗作用においては、両毒の投与比率をい
かに調整しても、親和性の問題から、生存時間が二倍を超えて延長することはあり
えませんし、同じ理由から、発症時間が二倍を超えて延長するということもありえな
いと言えます。このことは、〔第五の条件〕 を基にして、利佐子の死因を検討する
上で、非常に重要なことです。

 血中濃度の動態からみた両毒の拮抗作用の現実を考察した結果として、〔二つ
の時間〕 および〔第一の条件〕 から〔第五の条件〕 まで、両毒の拮抗作用が与
える影響について確認しておきます。
 両毒が共に存在してもカプセルの溶解時間や胃内容排出時間に変化はなく、両
毒の拮抗作用は〔二つの時間〕 に影響は与えません。グラフの描く曲線については、
両毒がそれぞれの受容体に結合するまでの過程では、両毒の拮抗作用の影響が現
れないことから、両毒を同時に摂取しても血中濃度の上昇のあり方には相互に影響を
及ぼすことはなく、〔第一の条件〕 第二の条件〕 で描く図1のグラフのトリカブト毒の
血中濃度時間曲線に、一切変化は及ぼさないということになります。また、発症の時刻
および心肺停止の時刻は事実として確定していますから、〔第二の条件〕 に両毒の
拮抗作用は影響を及ぼしません。
 なお、図1に、フグ毒の血中濃度時間曲線を描くとすれば、トリカブト毒の血中濃度
時間曲線の五分の一ほど下方に、上に膨らむ曲線として描くことができます。

〔第四の条件〕 は心肺停止時のトリカブト毒の血中濃度ですが、前項で説明し
たように、一二五.七ng/mlの測定値に「以上」 を付ける必要があります。フグ毒
は二六.四ng/mlと確定することができます。この26.4ng/mlは、心肺停止以前
に、最高血中濃度として現れたのではないかと、誤解する方も居るかもしれません
が、フグ毒は変換物質も含めて鑑定されていることから、心肺停止時の測定値二
六.四ng/ml「以上」 になることはありないのです。よって、フグ毒の血中濃度時間
曲線は、トリカブト毒の五分の一ほど下方になります。このフグ毒の血中濃度が、
五分の一程度で推移するということが問題となります。前項の例でいえば、トリカブト毒
の受容体への結合が五分後に四個なのに対して、フグ毒は血中濃度が低いため五分後
に一個結合するかしないか程度となり、あと1、2分も経過すると発症(実際は心電図異常
ですが、ここからは発症と表記します) してしまうことになります。このように、発症時間
の延長倍率は、一.二倍程度であり、このことが次の「血中濃度が事実を語る」 で説明する
〔第五の条件〕 に影響することになります。
 結論として、両毒の拮抗作用は,〔二つの時間〕 および〔第一の条件〕 から〔第
四の条件〕 までは一切影響を与えず、また〔第五の条件〕 として示している、、経
過時間に伴う血中濃度の値にも影響を及ぼさないことから、図1のグラフを検討す
る場合、両毒の拮抗作用については考慮する必要はありません。
 
 小麦粉を混合することによって、〔二つの時間〕 および〔第一の条件から〕 〔第四の条件〕
までに、なにか影響を与えるかということについて説明します。

 〔二つの時間〕については、小麦粉と混合してカプセルに詰めたからといってカプ
セルの熔解時間は変わりませんし、小麦粉は胃液にトリカブト毒と共に溶けるので、
胃内容排出時間は変わりません。
 〔第一の条件〕 〔第二の条件〕 は、図1のグラフの描く曲線の問題で、小麦粉
を混合したからといって上に膨らむ曲線が下に膨らむ曲線に変わることはありませ
んし、〔第三の条件〕 および〔第四の条件〕 は実際に鑑定している条件ですから、
小麦粉を混合しても変化することはありません。
 また〔第五の条件〕 は、両毒の拮抗作用のように、同時に摂取すると発症時の
血中濃度を押し上げる効果があるということですが、小麦粉と、トリカブト毒やフグ
毒とのあいだには、拮抗作用は一切ないことから、小麦粉を両毒と一緒に摂取して
も発症時の血中濃度を押し上げる効果はなく、〔第五の条件〕 は変わりません。
 では、小麦粉と混合すると、なにが変わるのでしょうか。共同鑑定書のように、水
飴状物質と小麦粉を一対一で混合した場合は、粉末状になるだけで、ほかはなん
ら変わりません。東京理科大学F教授の「小麦粉混合」 の鑑定の場合は、第四章
八「小麦粉の混合? それは影響ない」 で説明したように、テオフィリン対小麦粉
を一対一で混合すれば溶出性は悪くなるようですが、利佐子の場合摂取量は確定
できず不明であり、溶出性が悪くなる分、摂取量を増やせばいいだけで、小麦粉を
混合しても、図1の各条件には一切影響を与えず、図1はなんら変化することはあ
りません。

以上で、〔二つの時間〕 および〔第一の条件〕 から〔第四の条件〕 までの説明
を終わりますが、ここで経過時間に伴う血中濃度の値を計算する方法を示しておき
ます。




(C)Copyright 2003-2007. Powered By FC2. VALID HTML? VALID CSS?
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。