事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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全文-21 (2013/02/09(土) 22:09:18)
2012.02.06

 全文-21
 
 トリカブト毒とフグ毒の拮抗作用を知ることなど、なおさらです。
東北大学のO教授は両毒の拮抗作用について次の証言をします。
 
 O教授は、両毒の投与比率を変えた場合の生存時間の延長について、次のような
主旨の証言をしている。

アコニチンを致死量の約五倍投与するのに対して、同時投与するテトロトドキシ
ンの投与量を、致死量の一倍、二倍、三倍、四倍と変えて実験してみると、生存時
間の延長倍率は一・二倍とか1・五倍とか二倍に変わってくる。致死量の約六倍の
投与量は、比較的顕著に延長する投与量を選んでいる。

 
 心停止後の血中濃度の動態について、次のような主旨の証言がある。

琉球大学のO助教授は心室細動も心停止の一つであると証言する。
東北大学のS教授は、心停止後の血中濃度の上昇は非常に考えにくいと証言する。
東京大学のF教授は、死亡後、血中濃度は増えるわけがないと証言している。

 
 この証言でも明らかなように、投与比率によって拮抗作用の効果が変わるのです。
専門家が、両毒のマウスとヒトとの耐性の倍率を知り、毒量を精密に量って、まずトリ
カブト毒を単独でマウスに投与しての結果を得てから、両毒をマウスに投与し、その
拮抗作用の効果を知りました。とくに、約二倍の延長幅は、両毒の投与比率を、さま
ざまに変えて投与して探り得たのです。ただし、この効果は致死に至るまでの時間
延長であって、発症までの時間延長は確認できなかったと証言しています。また、マ
ウスの実験結果をヒトに適用する問題は、東北大学の三教授が薬学の専門知識を持
ち寄って検討し、両毒の毒性発現機構は、ヒトはマウスと基本的に同一と考えられる
として導き出したのです。

 多くの測定装置や実験機器を備え、専門知識を駆使した三教授が得た結果でさえ、
服用から発症までの時間が約二倍に延長するということは確認できなかったのです。
私のような素人が、両毒の、マウスとヒトとの耐性も知らず、毒量の測定装置もなく、
仮に手元にトリカブト毒の水飴状物質とフグ毒のどろどろ状物質があり、マウスを入
手したとしても、両毒の拮抗作用を知り得た、などという主張は絵空事に過ぎません。
もちろん、両毒の拮抗作用を知り得る文献などが出ていないことは、公判でも確認さ
れています。
なつ江を利用したトリカブト毒とフグ毒の効能実験については第四章で詳しく解説し
ますので、この章では虎の門病院への一回目の入院がトリカブト中毒だと主張した検
察官への反論にとどめます。

 トリカブト中毒とはどのような症状か、共同鑑定書に五つの症例が明らかにされて
いますのでそれを示します。
 
トリカブト中毒の五つの症例
 
 [症例 1]
平成元年四月、男性医師(五二歳) が採取した山菜(トリカブトをニリン草と誤
認) をおひたしにして医師は小皿に一皿、その長男(一七歳) は二つまみほど食
した(同午後六時五分) 医師は食直後から舌のしびれを感じていたが、同六時四
〇分から外出し同七時五分帰宅直後長男が口、手、足の痺れを訴えたのでトリカ
ブト中毒と直感し、強制嘔吐、医薬品の投与、人工透析等の処置を行った。医師は
同午後九時から不整脈が現れ、同午後一〇時には血圧が七〇mmHgまで低下、冷や汗、皮膚温低下、悪心、嘔吐が続いた。一方、長男は同午後七時すぎには不
整脈が出現したが同午後一一時頃には回復した。痺れ感も翌朝二時には消失し
た。記録された心電図によると長男は医師よりも危険な不整脈を伴っていた。医師
は摂取量が多く症状は末期に近かったにもかかわらず、心電図所見で軽症であっ
たのは、医師が高血圧のために服用している持続型の抗カルシウム剤アダラー
トL(一日二〇mgを二回服用) のためではないかと推察している。 
 
 [症例 2]
 
平成元年八月、男性(四十四歳) は郵送されてきたクズモチを十切れ、、その娘(四歳) は一切れ半食した。男性は五分後に口及び体の痺れを感じ、摂取二十分後に来院した。来院時不穏状態で発汗、嘔吐があり、足の麻痺があった。鎮静目的で医薬品を投与したところ、呼吸抑制が見られたため人工呼吸を開始した。この前後より大腿動脈の拍動触知不能となり。致死的不整脈を発症していたので、心肺蘇生術及び各種の医薬品による治療を行ったが、心停止となり、来院後四時間で死亡した。
その娘は、摂取五分後に口、手足の痺れを訴え、やがて歩行困難となり摂取二十分後に来院した。受診時不整脈は認められなかったが、その五分後に悪心及び不整脈が出現した。直ちに、胃洗浄や医薬品の投与等の処置を行った。その後、血圧低下、痙攣発作及び呼吸停止を起こしたため人工呼吸を施行したところすぐに回復した。その後医薬品の投与等の処置を行い、来院後九時間で不整脈は回復し、全身状態も安定した。 
 
[症例 3]

平成四年四月、午前七時、男性(四十五歳) がトリカブトの根と茎を細切りし浸しておいた水溶液を自殺目的で服用し、同午前七時三十分に来院した。来院時の主訴は口唇周囲のしびれ感であった。同午前七時四十五分に胃洗浄や下剤投与の処置を行ったが、同午前八時二十分には不整脈が現れ、呼吸停止に至った。人工呼吸及び医薬品投与等の処置を行った結果、自発呼吸が戻り同午前八時四十七分には不整脈は消失した。同午前九時から同日夕刻まではわずかに心室性期外収縮を認めるのみであった。 
 
[症例 4]
 
平成四年二月、昼、女性(六十一歳) が自殺目的でトリカブトの根を食し、同十二時三十五分救急外来を受診した。受診時、譫妄状態で血圧低下(七〇mmHg)、瞳孔散大、流涎、下痢、嘔吐が認められ、同十二時五十五分、突然、致死的不整脈を発症した。直ちに、心肺蘇生術施行下に血液吸着療法を行った結果、開始後約二〇分頃より不整脈や心停止の頻度が減少し、硫酸マグネシウムによる不整脈のコントロールが可能となった。翌朝には致死的不整脈は消失したが、心室性期外収縮は翌朝以降も持続した。 
 
[症例 5]
 
平成五年四月、四家族八名が付近の山より採取した山菜(トリカブトをモミジガサと誤認) をおしたしにして食した。摂取約二〇分後全員にした先端部に痺れを感じ、その後しびれ感は体幹及び上肢に広がった。八名中三名は摂取三十分ないし二時間後に前胸部不快感、嘔吐及び呼吸困難を訴え病院で受診した。受診時は不整脈はなかったが、その後不整脈が現れた。胃洗浄などの処置により、摂取五時間後不整脈は回復し自覚症状も軽快した。

 
 トリカブト中毒の特徴としては、よほど軽症でなければ心電図異常が現れます。心
電図異常とは、心臓に不整脈が起き、それを心電図に映したものです。心電図異常
について、公判での専門家の証言をまとめてみます。
代表的な心電図異常としては、房室ブロック、心室性期外収縮、心室性頻拍、心室
細動ですが、この四種類は心筋梗塞などの病気にも出現し、トリカブト中毒に特有な
ものではありません。
心臓は刺激伝導系によって心拍動が著制されます。刺激伝導系は、右心室に洞結
部があり、ここで電気的刺激が発生し、左心房、右心房を通って房室結節に伝わり、
一気に左右心室に伝わって心筋の収縮を起こします。これが一回の拍動になります。

 房室ブロックとは、房室結節を電気が通る過程でとおりが悪くなることを指します。

 心室性期外収縮とは、刺激伝導系からのインパルス(電気信号) が止まると、心筋
が独自にインパルスを起こして収縮する状態を言います。

 心室性頻拍とは、心室性期
外収縮が異常に速くなった状態を指しますが、
まだ一応のリズムを持って心臓から血
液が全身に押し出されています。

 心室細動とは、心筋がてんでんばらばらに動いてい
る状態で、肉眼的には心臓が
震えているように見えます。このときは、心臓は有効な
血液の押し出しを行わず
血液の循環は止まっています。

 この進行の仕方は、通常で
は、房室ブロック、心室期外収縮、心室性頻拍、心室細動
の順なようです。
それでは、トリカブト中毒の心電図異常とはどのようなものか、五つの症例について
共同鑑定書に添付されている参考資料から列記します。五つの症例と読み合わせる
とわかりやすいと思います。
 
五つの症例の心電図異常
 
症例1の医師は、明らかなものとしては心室性期外収縮である。
症例1の息子は、心房細動(心室細動と違い命に別状は来さない) に房室ブロ
     ックが加わったものから心室頻拍に移行する。
症例2の男性は、心室細動で死亡する。
症例2の娘は、心室性頻拍から心室性期外収縮で不整脈は消失する。
症例4の女性は、心室性頻脈、心室細動を繰り返す。
症例5の二名は、心室性期外収縮から心室性頻拍に移行する。

 
 なつ江の一回目の入院は、原因が病気かトリカブト中毒か、心電図異常の経過から
追ってみます。他の症状の経過は検討しません。
 
      一九八二年六月十六日、自宅近所の平塚胃腸病院に入院し、程度の軽い一度の
房室ブロックが確認され、その後程度の重い二度の房室ブロックが現れて
虎の門病院を紹介されます。
      十八日昼、救急車で虎の門病院に転院後、完全房室ブロックが出現しペースメ
   ーカーを挿入します。
      十九日午前十一時、一度の房室ブロックまで回復します。
      二十八日午後、インパルスが自発のみと認められ、ペースメーカーを抜去します。
      七月七日、一度の房室ブロックが消失します。
      七月十一日、退院します。病名は心筋炎でした。
 
 囲み記載の「五つの症例」 を見ていただくとわかるように、トリカブト中毒の心電図
異常は、房室ブロックで治まることはなく、すべて心室期外収縮まで進みます。なつ江
は十八日に完全房室ブロックが出現しペースメーカーが挿入されます。その効果は
外部からインパルスを送る仕組みで、それに反応して心拍動は調整されますが、翌
十九日に自発的インパルスは一度の房室ブロックまで回復していることが確認されま
す。二十八日にペースメーカーが抜去されてから、翌月六日までの九日間は一度の
房室ブロックが続きます。要するに、六月十六日の入院から、翌月六日までの二十一
日間、房室ブロックは続きますが、心室性期外収縮や心室性頻拍は一度も現れてい
ません。この事実は、なつ江の入院の原因が、病気であって、トリカブト中毒ではない
ことを証明しています。

 それでも検察官は、大阪大学のS教授の証言を盾に取って、一回目の入院をトリカ
ブト中毒だと主張します。S教授の証言は、「このときは、一回の投与だけでは少し説
明ができにくいと思う。入院後、トリカブト毒を何度か投与されたのではないかと思う」
というものです。「五つの症例」 を検討すればわかるように、死亡した症例2の男性と
「心停止を頻回繰り返した症例4以外、トリカブト中毒は発症から十二時間以内に回
復し、後遺症は一切ありません。S教授の証言を真に受けると、私は一日に二回、二
十一日間、計四十二回、なつ江にトリカブト毒を服用させたことになります。房室ブロ
ックでとどまる、あり得ない不可能な量をです。これほどいい加減な主張を平然と行う
のです。他の入院についても、主張の内容は大同小異です。

 なつ江を利用してトリカブト毒の効能実験を行ったという検察官の主張は、一回目
の入院を検討しただけでも、完全に破綻していることがわかります。



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