事実の証明

心残りのまま永眠した 神谷 力 氏の手記。 トリカブト事件を冤罪と断定し、 判決の矛盾を鋭く指摘する。
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(2013/01/01(火) 00:00:01)
         
 
このブログ、 【事実の証明】 とは、
人口に膾炙された 「トリカブト殺人事件」 の犯人とされ無期懲役刑が下されたが、
無罪を主張する 神谷 力 氏が書いた、再審請求の為の文書です。

数回分を残して病に倒れた、
神谷氏の思いが込められた未完の文書です。

長編なので関係者と相談の上、
再審請求用に短く編集した 【事実の証明-1~6】 と、
長編の原文 【全文-1~43 で構成しました。

長編になった理由は神谷氏の著書の

仕組まれた無期懲役

よりの引用が多いからです。
それだけ神谷氏の思いが感じられます。

興味のある方は購入サイトをリンクしてますので、
ご検討下さい。



PCや文章に未熟な管理人による
標題、区切り、各行の文字数など 、
若干変わっていますが、原文ママを心がけました。



素人の編集で、校正しきれない、
ミスタッチ(見逃した誤変換、OCR の誤認識含む)など、 

読みづらいところもあると思いますが、大意は判っていただけると思います。


管理人は関係者の方と共に、
関連当局が描いた、冤罪事件 と確信してここで公表することにしました。
この事件を見直していただけると幸いです。



神谷氏は 2012年11月17日22時50分永眠されました。

ご冥福を祈りつつ・・・・・



神谷氏の著書


*************************************************

 【事実の証明-1~6 から 【全文-1~43  へ昇順で続きます。
 読み下すようにした為、最新記事は末尾 になっております。

 個別の記事を読むには、ご面倒でしょうが、
 スクロールするか、 左サイドの最新記事、
カテゴリ月間アーカイブなどから ご覧下さい。


  ※ 1  2013.01.06 記事を 6→1 から 1→6 へ昇順に読み下すようにしました。
 ※ 2  2013.01.11 神谷 力 氏の 手記の全文を 【全文-1~43】 として載せるることにしました。
 ※ 3  2013.02.02 グラフの画像差し替えました。(
事実の証明-3 全文-14
 
※ 4  2013.02.21 料理表の画像差し替えました。(全文-25
 ※ 5  2013.02.22 このページの青字箇所を該当ページへリンクしました。 
 
※ 6  2013.03.05 カテゴリに グラフ・表 追加しました。
 ※ 7  2014.04.13 このページ中の 
OCR についてのリンクを追加し、文章を若干修正しました。
 






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 事実の証明-1  (2013/01/01(火) 00:01:00)
 
 事実の証明-1

 私の公判での闘いは、利佐子が服用したとされる、カプセルに詰められるトリカブト
毒の毒量の問題からはじまります。トリカブト毒は、経口的にそのまま摂取すれば、苦
みを伴う強いひりひりした刺激があり、とても耐えられないとのことですから、検察官
は、利佐子はカプセルで服用したと推認します。利佐子がトリカブト毒を服用したと仮
定すれば、この推認に私は異議はありません。

 私が購入したカプセルで最も大きい物は、パボランカプセルの、容量0.六七mlの
白いカプセルです。利佐子が服用したと仮定すれば、この白いカプセルに、トリカブト
毒を含む水飴状物質を詰めて服用したことになります。利佐子の保存血液から検出
されたトリカブト毒の毒量は、体重で換算して約五,九mgです。この毒量が白いカプ
セルに詰められるか、が争点です。この問題では、東北大学のM教授が、鑑定結果
の違う三種類の鑑定書を提出しています。

 最初の鑑定書は、一九九二年五月、第九回公判で提出されたもので、警視庁捜査
一課のY警部補が、専門家の指導で、白川産トリカブトの乾燥根2.2gからメタノー
ルで抽出・濃縮した水飴状物質を鑑定した結果です。鑑定結果は、「乾燥根1g当たり、
水飴状物質の収量は〇.一gです」

 二回目の鑑定は、一九九四年一月に提出された「共同鑑定書」に記載されていま
す。白川産トリカブトの根塊三十一個を、一個ごとにメタノールで抽出.濃縮した水飴
状物質を鑑定した結果です。各個の鑑定結果を平均すると、「乾燥根1g当たり、水飴
状物質の収量は約〇.二三g、それに含まれる毒量は二.六mgです」

 三回目の鑑定書は、一九六四年二月、第二八回公判で提出された物で、最初と同
じY警部補が、白川産トリカブトの生根約一〇〇gからエタノールで抽出.濃縮した水
飴状物質を鑑定した結果です。生根一〇〇gを乾燥させると、約三〇gの乾燥根にな
るとの証言があります。それで換算すると、鑑定の結果は、「乾燥根1g当たり、水飴
状物質の収量は約〇,〇四七g、それに含まれる毒量は約三,六mgです。

 最初の鑑定書が提出された第九回公判で、鑑定結果から、致死量の二mgを含む
水飴状物質が、白いカプセルに詰められるか、私は計算してみました。計算では、カ
プセルが九個以上必要です。公判はすでに九回を経過して、いろいろと調べたいこと
があるのですが、鑑定書や証人尋問調書が私の手元に一冊もなく、検察官の主張に
適切な反論ができません。カプセルが九個以上必要だという結果は、私の悔しさを検
察官にぶつける強力な武器となります。この時点から、利佐子が服用したとされるトリ
カブト毒とフグ毒が、白いカプセルに詰められるのかという問題が、服用から発症まで
約二時間の問題とともに、私の非常に重要な事項となります。

 二回目の鑑定書が提出されたときには、必要最小限度の六冊の鑑定書と九冊の
証人尋問調書が手元にありました。年金で生活している八四歳になる父にコピー代
の借用を申し込み、快い返事を受けて、弁護人にコピーをお願いし、一九九三年一一
月に届いたのです。これらの資料から、二回目の鑑定結果でも、利佐子の体内総毒
量を含む水飴状物質が、白いカプセルに詰め切れないことを明らかにできました。
三回目の鑑定書が提出されたとき、私は挫折感を味わいます。三回目の鑑定結果で
は、容量〇,七mlの二号カプセルに、トリカブトの致死量の約二七倍詰められている
のです。これがが事実なら反論の余地はありません。

 私は第三十回公判で、東北大学M教授に三つの鑑定結果の相違について詳細に
質問しますが、M教授は曖昧な答弁に終始します。
白いカプセルには、フグ毒も詰めなければならないのですが、フグ毒については、
クサフグの肝臓からアルコールで抽出・濃縮したどろどろ状物質の収量や、それに含
まれる毒量の、鑑定および証言は一切なく、私が問題にしたくても、この件に関する
鑑定および証言は一切なくその糸口がつかめません。この件に関する鑑定の申請を、
弁護人に依頼しようと検討しているうちに、事実審理が結審すると知らされて、果たせ
ませんでした。

 利佐子が病死でなく中毒死であるとすれば、私が毒物を利佐子に服用させるには、
友人たちと落ち合う午前十一時二十分以前に済ませておかなければなりません。航
空機が延着したのは予想外であって、定刻に到着することを前提として行動してい
たからです。利佐子の保存血液からトリカブト毒が検出されたと証言されるまで、
殺人疑惑と騒がれても、私には毒物の特定はできませんでした。服用してから何の
異常も示さず、約二時間後に突然吐き気をもよおして、発症するような毒物の存在
は、私の知識では皆無です。この疑問には、殺人疑惑を騒いだマスコミも答えてい
ません。私が逮捕されることはないと確信していたのは、これが原因です。

 事実の証明-2  (2013/01/02(水) 06:04:30)
事実の証明-2

 この事件には、多くの謎が含まれています。トリカブト毒は、ほんの微量を口に
含むだけでも、ぴりぴりという下を刺すような刺激と、ひどい苦味で、そのままで
は口から摂取することはできません。自殺など覚悟の上で服用する以外は、そのま
ま服用することは不可能です。よって殺人の道具に使用するなら、料理などに微量
を混ぜてその料理を大量に食べさせるか、カプセルに詰めて服用させる以外ありま
せん。この事件の場合は、カプセルで服用させたことになっています。ですから、
カプセルに詰められる毒量や、どのようなきっかけでカプセルを服用させたかなど、
この事件では、数々の謎を解いていかなければなりません。
謎解きというと、思い出されるのが推理小説です。私がもし、この事件を推理小
説に仕立てるとしたら、謎解きの中心には、やはり服用から発症までの経過時間を
据えるでしょう。

 利佐子が殺されたとするなら、高額な生命保険を掛けた私が殺害したことは容易
に推理することができます。ほかに犯人がいるか? という隠された事情の存在も
希薄ですから、ほかの犯人を探すという謎解きには馴染みません。利佐子は、殺さ
れたのか、病死なのか、ということが、数々の謎解きの結果としてわかるだけです。
私が犯人でなければ、ほかに真犯人がいるという事件ではありません。

 この事件の謎を解くには、充分な論理的思考とその展開が要求されます。第一審
判決と、それを踏襲している控訴審判決が、論理的に展開されているか全く疑問で
す。推理小説は論理の美を描くと、最近読んだ本に出ていました。判決が推理小説
と違うことは言うまでもありませんが、それでも推理小説と同じように、筋道の通
らない判決は、いくら組み立て方が上手でも私は美しさを感じません。

 判決公判から八か月後に判決文が出来上がりますが、それまでに私の手元には、
公判でメモノートに記録していた鑑定書の大部分と、ぜひ必要な証人尋問調書とを、
コピー代を工面して弁護人から送付してもらいました。判決文を受け取るまでに、
私はそれらの裁判資料を熟読します。その結果、利佐子が病死であることを証明する
「三つの事項」と「一つの事柄」 によって、私の無実が完璧に論証できる見通しがつきま
した。

「三つの事項」 とは、

第一の事項
 「利佐子の最初の自覚症状の訴えから、心肺停止までの経過時間などの諸条件を考察
すると、仮に、トリカブト毒とフグ毒を服用したとしても、その服用した時間帯が特
定され、その時間帯は、証拠上、利佐子がカプセルを服用した事実はないと認定され
ている時間帯であること」

第二の事項
 「利佐子は、トリカブトの塊根およびフグの内臓から、アルコールで抽出・濃縮した、
抽出物質を詰めたカプセルを服用したとされているが、そのカプセルの容量には限界
があり、利佐子が服用したと推定される毒量は、服用したとされるカプセルには詰め
きれないこと」

第三の事項
 「利佐子が服用したとされるトリカブト毒は、事前に、被告人が抽出・濃縮を行ない、
密閉ガラス瓶に保管していたものをカプセルに詰めたとされているが、そうであれば、
利佐子の血液および密閉ガラス瓶から検出されたトリカブト毒の、アコニチンとメサコ
ニチンの成分比率がほぼ同じでなければならないものが、大幅に相違すること」

「一つの事柄」 とは、

 「トリカブト中毒死の場合、例外なく、死亡に至る最終的症状は心室細動ですが、なつ江
は死亡時の入院で、発症から死亡まで心室細動は一切現れず、死亡の時は静かに心臓の
動きが止まる心静止です」。

 事実の証明-3  (2013/01/03(木) 10:28:32)
事実の証明-3

 利佐子の保存血液の鑑定時点から逮捕まで約四年間の遊びがありますが、「服用
から発症まで約二時間」 の問題が絡んでいると私は考えています。血液の保存が
混入を防ぐ完璧な状態であるなら、遊びはなかったはずです。保存の杜撰さが、捜査
当局が服用から発症まで約二時間を乗り越えられず、逮捕に踏み切ることができな
い障害でした。別件で逮捕に踏み切るのは、一部のマスコミが事件を大々的に取
り上げてアジテーションを行ってからです。私には、マスコミが裁判の第一審を担当し
ていると感じるほどでした。逮捕されてからも、服用から発症まで約二時間の問題は
解決されていません。検察側の立場から、公判でこの問題が解決されたように見せ
掛けがあったのは第一審の事実審理が終わる間際です。

 原審では、検察官が様々な状況証拠を提起して有罪と断定し、裁判官はそれを認
定します。私は無罪を主張して、その状況証拠にすべて反論しました。保存血液から
の両毒の検出でさえ、保存が杜撰であったことから状況証拠と見られて当然です。
これらの状況証拠が、有罪の証拠となるか、無罪の証拠となるかは、私が示している
「三つの事項」 と「一つの事柄」 が、崩せるか、崩せないかによって決定します。
言い替えれば、状況証拠を道理にかなったように工夫して有罪に見せ掛けても、
「三つの事項」と「一つの事柄」 が崩せなければ、状況証拠はすべて無罪の証拠と
なるのです。

 心停止後の血中濃度の動態について、次のような主旨の証言がある。

 琉球大学のO助教授は、心室細動も心停止の一つであると証言する。
東北大学のS教授は、心停止後の血中濃度の上昇は非常に考えにくいと証言する。
東京理科大学のF教授は、死亡後、血中濃度は増えるわけがないと証言している。

 心肺停止後の血中濃度の上昇については、この証言から、その可能性はないと言
えます。よって、一二五.七ng/mlという血中濃度は、心肺停止時にはその濃度まで
上昇していたことになります。グラフで示すと、利佐子の場合、図5のようになるこ
とはないと言えます。なお、図1から図5までのグラフは、曲線の形を明確にす
るため、C点の先を点線で描いていますが、実際には、曲線がC点から先、どのよ
うなカーブを描くか不明です。

グラフ-1.2
画像をクリックすると大きくななります。

 次に、心肺停止後に代謝や分解があるかという問題を検討します。

 東北大学M教授は、利佐子から血液が採取された約一年後の第一次鑑定と、
約五年後の第二次鑑定とのあいだに、測定値にほとんど相違がないことから、血液を冷凍保存し
ておけば、その中に含まれるトリカブト毒は、ほとんど分解しないと証言しています。

 よって、代謝や分解があったとすると、心肺停止から血液が採取されるまでの、
遺体で保存されていた二二時間のあいだが問題となります。

 東京理科大学F教授は、「死亡直後も酵素活性がまだ多少あるとすれば血中濃
度は減るだろう」 と証言し、
血液鑑定をしたM教授は、「分析方法として、アコニチンのほかにベンゾイルアコニン、
あるいはアコニチン、そういった代謝物、あるいは分解物を測れば、総量をもっと詳しく吟味できると思う」

と証言しています。


 これらの証言から、心肺停止後に代謝や分解があり、二二時間のあいだにアコニチン三毒
素が他の物質に若干形とも代謝および分解した可能性が指摘できます。よって、心
肺停止時のアコニチン系三毒素の総量が、一二五,七ng/mlより高かった可能性が
あります。以上から、「心肺停止時のトリカブト毒の血中濃度は一二五.七ng/ml以上で
ある」 と、「以上」 を加えることによって正確な表現となります。

 両毒が利佐子の体内に存在していたと仮定したことで、大変不自然な問題が生
じて、混入説が浮かび上がります。
この問題は「第一の事項」 全般に関わります。先ほどの両毒の鑑定結果を見ま
すとトリカブト毒は変換物質(代謝物および分解物) を含めず三毒素だけで
一二五.七ng/mlです。フグ毒は変換物質を含めて二六.四ng/mlです。そのうち
変換物質(4-エピテトロドキシンおよびテトロドン酸) が約九七.七%です。

 M教授は、トリカブト毒の変換物質であるベンゾイルアコニンおよびアコニンを測定すれ
ば総量をもっと詳しく吟味できると証言しています。


 両毒が利佐子の体内に存在し、その結果、採取された血液から両毒が検出され
たとすると、両毒は同一の血液に含まれて数年間冷凍保存されていたのですから
、フグ毒の約九七.七%の変換物質は、遺体で二二時間冷蔵保存されているあい
だに、変換したのかという疑問も生じます。しかし、これが不自然なのです。先のF
教授の証言から考えると、若干の変換はあるのかと受け取れますが、約九七.七
%も変換するとは考えられません。フグ毒は冷凍保存でも、変換の可能性がある
のか考えてみましたが、一般に行われている血液検査のための冷凍保存では、血液
に含まれる、ほとんどの物質が、変換がなく成分が固定されると効いていますから
、フグ毒も、冷凍保存で、成分が変換することはなく、固定されると推定できます。

 事実の証明-4  (2013/01/04(金) 17:44:53)
事実の証明-4

 では、ほかにどのようなことが考えられるか、検討してみます。
トリカブト中毒について五つの症例を調べますと、事実上の心停止である心室細
動が起きない場合、発症してから五時間から一〇時間で回復しています。また、フ
グ中毒について、大阪大学のS教授は、呼吸停止から早い例では四時間、大体七
、八時間で、人工呼吸器で呼吸を確保すると回復すると証言しています。要するに
、回復するとは、有毒の物質が無毒の物質に変換するということです。両毒とも同
じような経過時間を辿って回復するところが似ています。両毒について、生体では、
このような現象が見られます。

 このことから、利佐子が両毒を服用したと仮定して、発症から心肺停止までの四
三分間に、若干は変換したとしても、約九七.七%も変換したとは考えられません。
とすると、若干の変換は無視して、服用時、すでに有毒のテトロトドキシンは、
約二,七%、〇,七ng/mlほどしか含まれていなかったと見るのが順当です。この
量は、利佐子の体重四七kgで換算すると、体内総毒量は約〇,〇三三mgとな
り、致死量の約六〇分の一です。((致死量は両毒とも約二mg)。

 O教授は、両毒の投与比率を変えた場合の生存時間の延長について、次のような
主旨の証言をしている。

 アコニチンを致死量の約五倍投与するのに対して、同時投与するテトロドトキシ
ンの投与量を、致死量の一倍、二倍、三倍、四倍と変えて実験してみると、生存
時間の延長倍率は一・二倍とか一・五倍とか二倍とかに変わってくる。致死量の
約六倍の投与量は、比較的顕著に延長する投与量を選んでいる。

 この証言でわかるように、テトロトドキシンが致死量の約六〇分の一では、判決
が確認している、トリカブト三毒素の体内総毒量五,九mg、致死量の約三倍に比し
て、余りにも微量で、両毒の拮抗作用などは無きにひとしいものです。よって、利佐
子がトリカブト中毒死と仮定すると、発症時間が約二倍に延長し「一〇分が経過す
るか、血中濃度が約二〇ng/mlに上昇するまで」 という両毒の拮抗作用の影響が
なくなり、「カプセルが溶解してから、五分が経過するか、トリカブト毒の血中濃度が
一〇ng/mlに上昇するまでに発症する」 と確定できます。このことは、図一でもわ
かるように、両毒の拮抗作用があった場合に比較して、時間的にも大きな差になり
ます。

 このように、検察官が利佐子の中毒死の基盤として主張し、裁判所が認定した、
両毒の拮抗作用を、まったくの机上の空論にしてしまいます。

 また、ありえないことですが、発症から心肺停止までの四三分間に、テトロトドキ
シンが約九七.七%変換したと推測しますと、生体では同じような回復までの時間
経過の現象が見られるトリカブト三毒素も、同程度の変換があると見なさなければ
なりません。仮に、アコニン等の変換物質を含めて鑑定し、三毒素以外に九七,七
%の変換物質が測定されたとすると、変換物質を含めたトリカブト毒の総量ng/ml、
利佐子の四七kgの体重で換算すると体内総毒量は一九六,九三mg、致死量の約
九八倍になります。判決が推認しているフグ毒の体内総毒量は一,二四mg、致死
量の約〇,六倍です。トリカブト毒の変換が、フグ毒の変換より少なかったとしても
、この両毒の致死量の一六〇倍ほどの大幅な差が、両毒の拮抗作用が効果を現
す五倍ほどに縮むとは考えられません。ありえないことを計算まで行ってみたのは
このことを示したかったからです。

 やはりこの場合も、両毒の拮抗作用は、机上の空論に来してしまいます。
では何故テトロトドキシンが、約九七,七%もテトロドン酸等に変換したのか!
私は、両毒が、利佐子から採取された血液の保管中に混入されたと断定していま
すから、保管していた血液に混入される前に、その混入されるフグ毒が、何らかの
理由で変換してしまっていたと判断しています。

 事実の証明-5  (2013/01/05(土) 18:33:47)
 
  事実の証明-5

 カプセル服用の可能性

 友人たちと落ち合う予定時刻の午前一一時二O分から私と別れるまでは、第一
審当時私は、利佐子が私と一緒にいたのだからカプセル服用の可能性はあるだろ
うと単純に考えていた。しかし、利佐子は、友人たちが二階から到着ロビーに降りてく
るのを探している最中だ。到着の遅れたことがわかっていれば余裕もあるが、いつ
降りてくるかわからず間断なく探しており、落ち合えばすぐに南西航空のターミナル
ピルに友人たちと移動しなければならないから、カプセルを服用している余裕など
ない。

 このように検討してくると、午前一一時二O分以降のカプセルの服用は利佐子の
置かれていた具体的条件を無視すれば可能だというだけで、利佐子の具体的件を
検討すると服用は不可能だという結論になる。

 それでは、友人三人と落ち合う予定の午前一一時二O分より前に、利佐子がカ
プセルを服用した可能性はどうだろうか。利佐子がカプセルの服用を申告していな
いこと、夕食後でないこと、この二点を除けば、服用の条件としてはなんの障害もない。
問題となるのは、利佐子が最初の自覚症状を訴えるまでにカプセルを服用してから
二時間以上経過するということだけだ。ただし、この問題がもっとも重要なことだが。
判決の認定は、利佐子の置かれていた具体的な条件をまったく検討することなく
下されている。午後O時五三分以降のカプセルの服用は、友人三人の証言から一切
ありえないことは明らかにされているが、いま論じたように午前一一時二O分以
降のカプセルの服用も、利佐子の置かれていた具体的条件を検討すればその可能性はない。
判決も午前一一時二O分以降のカプセルの服用は不自然と認識したのか、二つの鑑定結果を示して、
判決が認定する発症時刻、午後一時一五分から二時間以上前の午前一一時一五分以前にカプセルを
服用した可能性のあることを推認する。

 それでは、判決が推認するように、発症から二時間以上前に利佐子が両毒入り
のカプセルを服用した可能性があるかを見ていくことにしたい。

トリカブト中毒の五つの症例

[症例1]

 平成元年四月、男性医師(五二歳) が採取した山菜(トリカブトをニリン草と誤
認) をおひたしにして医師は小皿に一皿、その長男は二つまみほど食した(同午
後六時五分) 、医師は食直後から舌のしびれを感じていたが、同六時四十分か
ら外出し同七時五分帰宅直後長男が口、手、足の痺れを訴えたのでトリカブト中
毒と直感し、強制嘔吐、医薬品の投与、人工透析等の処置を行った。医師は同
午後九時から不整脈が現れ、同午後十時には血圧が七十mmHgまで低下、冷
汗、皮膚温低下、悪心、嘔吐が続いた。同午後十時から十一時頃が最も症状が
強かった。また、痺れは翌朝四時前まで続いた。一方、長男は同午後七時過ぎに
は不整脈が出現したが同午後十一時頃には回復した。痺れ感も翌朝二時には消
失した。記録された心電図によると長男は医師よりも危険な不整脈を持ってい
た。医師は摂取量が多く症状は末期に近かったにも拘わらず、心電図所見が軽
症であったのは、医師が高血圧のために服用している持続型の抗カルシウム剤
アダラートL(一日二十mgを二回服用) のためではないかと推察している。

[症例2]

 平成元年八月、男性(四十四歳)は郵送されてきたクズモチを十切れ、その娘
(四歳)は一切れ半食した。男性は五分後に口及び体のしびれを感じ、摂取二十
分後に来院した。来院時不穏状態で発汗、嘔吐があり、足の麻痺があった。鎮静
目的で医薬品を投与したところ、呼吸抑制がみられたため人工呼吸を開始した。
この前後より大腿動脈の拍動触知不能となり、致死的不整脈を発症していたの
で、心肺蘇生術及び各種の医薬品による治療を行ったが、心停止となり、来院後
四時間で死亡した。
 その娘は、摂取五分後に口、手足のしびれを訴え、やがて歩行困難となり摂取
二十分後に来院した。受診時不整脈は認められなかったが、その五分後に悪心
嘔吐及び不整脈が出現した。直ちに胃洗浄や医薬品の投与等の処置を行った。
その後、医薬品の投与等の処置を行い、来院後九時間で不整脈は回復し、全身
状態も安定した。、

[症例3]

 平成四年四月、午前七時、男性(四十五歳) がトリカブトの根と茎を細切りにし
浸しておいた水溶液を自殺目的で服用し、同午前七時三十分に来院した。来院
時の主訴は口唇周囲のしびれ感であった。同午前七時四十五分に胃洗浄や下
剤投与等の処置を行ったが、同午前八時二十分には不整脈が現れ、呼吸停止
に至った。人工呼吸及び医薬品投与等の処置を行った結果、自発呼吸が戻り同
午前八時四十七分には不整脈は消失した。同午前九時から同日夕刻までわず
かに心室性期外収縮を認めるのみであった。

[症例4]

 平成四年二月、昼、女性(六十一歳) が自殺目的でトリカブトの根を食し、同十二
時三十五分救急外来を受診した。受診時、譫妄状態で血圧低下(七十mmHg)
、瞳孔散大、流涎、下痢、嘔吐が認められ、同十二時五十五分、突然、致死的不
整脈を発症した。直ちに、心肺蘇生術及び各種の不整脈剤による治療を行った
が、不整脈、心停止を頻回繰り返した。そこで心肺蘇生術施行下に血液吸着療
法を行ったかっか、開始後約二十分頃より不整脈や心停止の頻度が減少し、硫
酸マグネシュームによる不整脈のコントロールが可能となった。翌朝には致死的
不整脈は消失したが、心室性期外収縮は翌朝以降も持続した。

[症例5]

 平成五年四月、四家族八名が付近の山より採取した山菜(トリカブトをモミジガ
サと誤認) をおひたしにして食した。摂取約二〇分後全員に舌先先端部にしび
れを感じ、その後しびれ感は体幹及び上肢に広がった。八名中二名は摂取三十
分ないし二時間後に前胸部不快感、嘔吐及び呼吸困難を訴え病院で受診した。
受診時は不整脈はなかったが、その後不整脈が現れた。胃洗浄などの処置により、
摂取五時間後不整脈は回復し自覚症状も軽快した。

 事実の証明-6  (2013/01/06(日) 07:18:30)
 事実の証明-6

トリカブト中毒の発症と個人差 

 利佐子が両毒入りのカプセルを服用して発症するまで二時間以上経過したとす
ることに、トリカブト中毒の発症に至るまでの個人差がなにか大きく影響しているの
だろうか。この問題を明らかにするために、トリカブト中毒の発症に至るまでの個人差
について、さきに挙げた五つの症例を参考にして検討してみる。ただし、発症後の個
人差については、治療行為が各症例によってまちまちなので問題として取り上げるこ
とはしていない。

 発症までの個人差を検討する場合は、二つの要因に分ける必要がある。第一の要
因は、吸収能力など本来の体質的な個人差で、胃の消化能力、小腸の吸収能力が
良いか悪いか、吸収後の血中濃度の上昇と、薬理作用を及ぼす器官・組織への薬物
の結び付きの間とでもいえるタイムラグの個人差、発症に至る閾値の個人差などだ
が、健康状態も影響を与える。第二の要因は、消化の早い抽出エキスや粉末の摂取
か、消化の遅い葉や茎の摂取か、という摂取の形態や、空腹状態か、満腹状態か、
という摂取時の胃の状態だ。この第二の要因は、個人差というよりは摂取時の条件と
いえるが、一応個人差として扱う。発症までの個人差を検討する場合、この二つの要
因を明確に分けて検討する必要がある。

 トリカブト中毒の摂取から吸収による発症までの経過時間の個人差は、本来の体
質的な要因による個人差は小さく、摂取の形態や摂取時の胃の状態による個人差が
主な要因であることは明らかといえる。
以上から利佐子がトリカブト中毒と仮定すると、やはり本来の体質的な要因による
個人差は小さく、発症までの経過時間は、摂取の形態や摂取時の胃の状態による個
人差が主な要因といえる。よって利佐子は、空腹時に、消化の必要のない抽出エキ
スを服用したとされるから、カプセルが溶解してから発症するまでの時間は、症例2の
二名と同等かそれより早いと思われる。しかし、症例2の二名の五分間は、二名の症
状の出現の仕方を比較してみると、タイムラグなどが影響して、トリカブト中毒の発症
時間の最短時間と考えられるので、利佐子は、カプセルが溶解してから発症まで、五
分が経過すると見るのが順当だ。

 判決は、利佐子がカプセルを三重にして服用したと示唆するから、カプセルの溶
解時聞が一O分程度と推定すると、右の五分と合わせて、カプセルを服用してから
発症するまで一五分程度ということになり、それよりも五分や一O分延長したとして
も、とても二時間には及ばない。それでは、判決が推認するように、トリカブト毒とフ
グ毒の措抗作用が影響しているというのだろうか? その点を次に検討してみよう。

 両毒の投与比率で拮抗作用は変わる 

トリカブト毒とフグ毒を、一個のカプセルに詰めて利佐子に服用させる。私はこの
意味を考え抜いた。しかし、なぜそうするのかわからない。なにかを期待してやみく
もにフグ毒を詰めた?そんなことはありえない。フグ中毒がどれほど重症であろうと
呼吸を確保すれば死に至らないことは、料理の実習書を読んで私は充分に理解し
ていたし、そのことをクサフグを購入するとき、M氏などにも話している。さらに、フグ
中毒の場合、摂取してから数時間経過してから呼吸停止になることも料理の実習
書を読んでわかっていた。利佐子が発症すれば、すぐに治療が行なわれるだろ
うから呼吸の確保は容易なことだ。利佐子を殺害する目的で、トリカブト毒と一緒に
フグ毒をカプセルに詰める意味はない。

 それでは、両毒に拮抗作用があり発症時聞が延長することを私が知っていて、
両毒をカプセルに一緒に詰めたというのだろうか。発症時聞が延長することを、どう
して知りえたのか?その方法はない。判決は、マウスを使用しても、なつ江を利用し
ても、私が両毒の桔抗作用の実験を行なったとは認定できなかった。判決の認定
は別として、私は次のことを考えてみた。

 マウスで実験をして、トリカブト中毒の発症時間の延長を知る実験器具もない
素人の私が、不可能なことだ。共同鑑定書を提出したO教授は、両毒の純品を
ミクロ天秤などの精密器具を使って正確に定量し、両毒の投与の量をそれぞれ選び、
幾つものケースに組み合わせて実験して結果を得ているのだ。それも発症時間の
実験結果ではない。生存時間の実験結果なのだ。仮に、私の手元に両毒の抽出
物質があったとしても、その毒量を定量する方法はない。両毒を一緒にむやみに
投与しても、どちらの毒でマウスが死んだかさえわからない。O教授は、両毒の一
つの組み合わせだけでも四O匹のマウスを使用し比較して結果を得ている。私が
塩分摂取過多の実験のために購入したマウスは五O匹だ。このマウスを全部両毒
の拮抗作用に使用したとしても、両毒を幾つのケースに組み合わせて実験できる
だろうか。せいぜい五つの組み合わせ実験ができる程度だ。もう一度言うが、私に
は毒量を定量する方法がない。その組み合わせが妥当なものかさえわからない。

 万が一、幸運にも両毒を一緒に投与して生存時間の延長が確認できたとしたら、
素人の私は、発症時間の延長に気がつくどころか、死亡までの時聞が延びたの
だから、どちらかの毒が、どちらかの毒を減毒したと考える。カプセルに詰められる
毒量は限られている。利佐子を殺害する目的なら、できるだけ多くの毒量をカプセ
ルに詰めたい。もちろん、私はフグ毒でヒトを殺せないことは知っているから、トリカ
ブト毒の話だ。当然、カプセルにフグ毒を詰めるのはやめるだろう。

 それでも、私はしつこく自らに問いかける。マウスの実験で、私が発症時間の延
長に気がつく方法はないだろうか? それは無理だ。専門家のO教授でさえ、一九
九三年二月ころから六カ月ほどの期間をかけて、両毒の投与比率を変えて何回か
実験しているが、それでも発症時間の延長は確認しておらず、生存時間の延長か
ら発症時間の延長を推定しているにすぎない。口の利けないマウスの発症を確認
することは、専門家でも困難だと証言されている。まして、素人の私がマウスの発
症を確認することはできず、発症時間の延長に気がつくはずはないのだ。

 それでは、参考文献から知りえたのではないか? それは、さらに不可能だ。第
二回公判で検察官は琉球大学のO助教授に、両毒の桔抗作用について記載した
参考図書の存在を執劫に問いただすが、明確な答えがなく、結局、一般に入手で
きない文献名を挙げるにとどまる。まして、発症時聞が延長する両毒の投与比率
で拮抗作用は変わるなどと記載した文献は一切ないのだ。私が発症時間の延長を、
参考文献から知りえた可能性はない。

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